薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

小林化工のイトラコナゾールに睡眠導入剤が混入!とうとう死亡例まで…

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小林化工で前代未聞な事件が起きました。。


イトラコナゾール錠50「MEEK」に睡眠導入剤の成分であるリルマザホンが混入してしまったとのこと。


一体何が起きてしまったのか?


どうしてこのようなことになってしまったのか??


現時点で私が把握していることをまとめてみたいと思います。

2020年12月7日:イトラコナゾール錠50、100、200自主回収(クラス2)について追記
2020年12月8日:イトラコナゾール錠「MEEK」に関しての患者さん説明FAQについて追記
2020年12月9日:健康被害の発生状況を追記
2020年12月11日:健康被害の発生状況を更新
2020年12月13日:健康被害の発生状況を更新
2020年12月17日:「健康被害にあわれた患者様へ」を追記
2020年12月21日:健康被害の発生状況を更新、「交換対応等へのお願い」を追記

イトラコナゾール錠50「MEEK」を内服されている方

今回の件の内容をまとめる前に、現在イトラコナゾール錠50「MEEK」を内服している方へのメッセージです。


一部のイトラコナゾール錠50「MEEK」で健康被害が出ています。


イトラコナゾール錠50「MEEK」を処方されている方は必ずお薬をもらった調剤薬局、病院へ問い合わせて下さい。


イトラコナゾール錠50「MEEK」全てに睡眠導入剤が混入しているわけではありません。


ロット番号が「T0EG08」というものに混入している可能性があるわけですが、そのロット番号を把握しているのはそのお薬を調剤した調剤薬局、病院となります。


自分の手元にあるイトラコナゾール錠50「MEEK」が対象のロット番号に該当するかを確認してもらって下さい。


小林化工のイトラコナゾール事件の第一報

それでは、ここからは私が把握している限りの事件の経緯をまとめていきたいと思います。


私がこの件を把握したのは12月4日夜。


SNSで下記のPDFが出回っているのに気づいたのがきっかけでした。


イトラコナゾール錠50「MEEK」自主回収(クラスⅠ)のお知らせ


いつも(?)だと、


「出荷判定試験の一部が定められた手順どおりに実施されていないことが判明したため、当該品の自主回収および出荷停止を行うこととします。」


「なお、製造自体は適切に行われており、有効性および安全性への影響はないと考えております。現時点までで健康被害の報告はございません。」


というのが決まり文句となっていましたが、今回はそんな悠長なことを言っている場合ではありません。


「意識朦朧などの精神神経系の重篤な副作用が報告されました」


とのこと。

イトラコナゾール錠50「MEEK」で精神神経系の重篤な副作用が出た理由

理由はある意味シンプルです。


「睡眠導入剤の成分が混入したため」


この一言です。


問題は、なぜ混入してしまったのか?


です。


もはや意味が分かりません。


抗真菌剤として分類されているイトラコナゾールに睡眠導入剤の成分(リルマザホン)が混入??


そんなことってある??


どう間違ったらそうなるの??


この答えは、これまたSNSに転がっていました。


イトラコナゾール錠50「MEEK」にリルマザホンが混入してしまった理由

SNSに転がっていたある新聞社の記事を読んでみると下記のような記載がありました。


「イトラコナゾールの成分と睡眠導入剤の成分「リルマザホン」を取り違え、保管場所から持ち出したのが原因と説明。本来は二人一組で確認が必要だったが、一人で作業していた。」


これが真実なのであれば、いろいろな疑問が出てきます。


もはや製薬業界の信頼が大きく揺らぐ事件ではないか?とさえ思います。


イトラコナゾール錠50「MEEK」にリルマザホンが混入してしまった理由の疑問点①


成分を間違えてしまったとのことですが、仮に成分を間違えて配合した後、おそらく何度も検品のような作業があるかと思います。


その検品作業がどのような過程なのかは病院薬剤師である私には不透明なところですが、少なくても一度も検品作業がないことはないはずです。


錠剤が砕けていないか、PTPシートに不都合がないかどうか、、などなど。


しかし、その検品作業の中に「医薬品として適合しているかどうか」の確認作業がないものなのでしょうか??


完成した薬1錠1錠全てに確認作業を行うのは不可能ですが、今回の自主回収錠数が10万錠ということなので少なくてもその10万錠が製造された間にチェックは行われていなかったのでしょう。


それが普通だ!と言われたらそれまでですが、どのような管理体制だったのかを個人的に詳しく知りたいところです。


イトラコナゾール錠50「MEEK」にリルマザホンが混入してしまった理由の疑問点②


次に気になるところは、


本来は二人一組で確認が必要だったが、一人で作業していた。


というところです。


間違えるととんでもないことになるのは容易に想像がつくこの作業を普段二人で確認していたとのことですが、そんなもんで良いの??


そして一人での確認でも作業を進めてしまうそのシステムってどうなの??


ここは個人的には救いようがない点だと思います。


イトラコナゾール錠50「MEEK」にリルマザホンが混入してしまった理由の疑問点③

混入してしまった理由というよりは、なぜ混入してしまった後に気付かなかったのか?という点になります。


福井新聞ON LINEの記事に下記のような文章があります。

睡眠導入剤成分の混入があった錠剤について、小林社長は「品質試験による確認を精査すると、(混入に気付くことができた)可能性がある。厳密なチェックができていなかった」と述べた。

引用元:小林化工、異変検出も混入気付けず 薬に睡眠導入剤、1人死亡134人被害 | 社会,医療 | 福井のニュース | 福井新聞ONLINE


いやいや、何のための品質試験だよ??


そもそも、全く違う成分が全く違う量混入していても気付けない品質試験ってなんだよ??


大雑把なチェックにもほどがあるんじゃないの??


これが私の率直な感想です。


イトラコナゾール錠50、100、200「MEEK」自主回収(クラスⅡ)について


クラスⅠだけでも大ごとですが、これだけでは話は終わらないようです。。


50mgのクラスⅠの対象ロット以外、100㎎、200㎎製剤でもクラスⅡの自主回収が発表されました。


イトラコナゾール錠50mg「MEEK」自主回収(クラスⅠ、Ⅱ)のお知らせ
イトラコナゾール錠100mg、200㎎「MEEK」自主回収(クラスⅡ)のお知らせ


なぜ対象ロット以外も自主回収??


なぜ他の規格も自主回収??


と思いましたが、なんと理由はリルマザホンとは別のところにあったようです。

承認書に記載のない工程を実施していることが判明いたしましたので、有効期限内の全ロットについて自主回収(クラスⅡ)することといたしました。


いやいや、最近の決まり文句として既に紹介した文とほぼ同じじゃん…。。


そしてこれは想像よりも大ごとです。


承認書に記載のない工程を実施していたから今回のような睡眠導入剤が混入してしまったのではないか??


どうしてもこのように考えてしまいます。


ヒューマンエラーかのように見える本件ですが、もしかしたらもっと大きい問題が潜んでいるのかもしれません。


イトラコナゾール錠「MEEK」に関しての患者さん説明FAQ

小林化工より、患者さんへの説明FAQが公開されていました。

イトラコナゾールに関しての患者説明用FAQ①
 
イトラコナゾールに関しての患者説明用FAQ②
 

50mg製剤はクラスⅠということもあり、患者さんの手元にある残薬も全て回収となります。


しかし100mg製剤と200mg製剤は承認外の製造はしていたものの、安全性などに問題はないとの判断で患者さんの手元にある残薬は回収しない方針です。

イトラコナゾール錠「MEEK」による健康被害の発生状況

日本薬剤師会発行の日薬ニュース号外(247号)に健康被害の発生状況についての記載がありました。


あくまで現時点では12月6日時点で報告された健康被害をまとめます。


報告された健康被害は63件。


内、交通事故(自損事故)が8件、精神神経系による緊急搬送が4件、精神神経系による入院が6件とのことです。


12月11日には、福井新聞ONLINEより下記の件数が報告されています。


報告された健康被害は113件。


内、運転中の事故が14件。死亡例はなし。


12月13日以前は日本薬剤師会だったり新聞社などが発表していた断片的な情報しかありませんでしたが、12月13日には小林化工のホームページ上で詳細が公表されるようになりました。

小林化工が公表している副作用状況
 

ちなみに上の画像は、12月21日10時時点での内容になります。

小林化工のイトラコナゾールで死亡例
 

上の画像は小林化工で公表された死亡症例の一例目に関する資料になりますが「因果関係不明」とされています。


2例目の死亡例に関しては因果関係を否定出来るとして記載されていないのでしょうか?


真相が分からない現時点では変に言及しないでおこうと思います。

イトラコナゾール錠「MEEK」が製造中止の案内を9月に行っていた??

SNSでこんな情報を頂きました。


(イトラコナゾール錠「MEEK」に関して)今年の9月に販売中止の案内が来てて、経過措置期限が2022年だったんでその時に切り替えた。


販売中止??


これは初耳だ!


ということで小林化工のホームページを見てみると、確かに2020年9月付で公開されています。

イトラコナゾール錠「MEEK」販売中止
 


私が勤務している病院では幸いなことに(?)イトラコナゾール錠「MEEK」を採用していなかったので知りませんでしたが、上記のように9月の時点で販売中止が決まっていました。


な~んかタイミングがおかしいと思いませんか??


根拠は全くありませんが、今回のクラスⅠ、クラスⅡの回収と販売中止に何か関係があるのではないか??と少し考えてしまいます。


今後さらに情報が出てくればはっきりすることかと思いますが、今はこれ以上患者さんに不利益が出ないことを祈るばかりです。


イトラコナゾール錠50「MEEK」の交換対応等へのお願いについて

情報をアップするのが少し遅くなってしまいましたが、12月19日にイトラコナゾール錠の交換対応についての案内がメーカーより出されています。

まずは患者さん用↓↓

イトラコナゾール錠交換対応「患者様用」
 


次に医療関係者用↓↓

イトラコナゾール錠交換対応「医療関係者用」
 

いろいろと突っ込みたいところがあるのですが、、まずは「今さら??」というのが正直な感想です。


イトラコナゾール錠50「MEEK」で健康被害にあわれた患者様へ

今回の件に関しての補償に関して公式Hpにまとめられていますので、そこで公開されている資料へのリンクを貼っておきます。

健康被害にあわれた患者様へ

『イトラコナゾール錠 50「MEEK」(ロット番号:T0EG08)』を服用された患者様への補償についての方針

健康被害にあわれた患者様へ―弊社より患者様お一人お一人にご連絡させていただきます―

イトラコナゾール錠 50「MEEK」の交換対応等へのお願い

今回のイトラコナゾール事件のあおりを受けて、Meiji Seika ファルマで大量の出荷調整↓
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とうとうバンコマイシンが出荷調整に…
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その他自主回収等ネタ↓
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とうとうコナン錠が製造販売中止↓↓
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