薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

「パスツレラ症」猫や犬などの動物咬傷(こうしょう)に注意

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猫や犬を飼っていると咬まれたり引っかかれたりすることってありませんか?

ちなみに私の家で飼っている猫(名前:にゃんちゅう)はたまに咬みます(笑)

我が家の飼い猫「にゃんちゅう」
「にゃんちゅう」です

本人は遊び半分で咬んでいるのかもしれませんが、こちら側としてはとにかく痛い!

咬まれた後はその痛みと戦う必要があるのですが、場合によっては痛みと戦うだけでは済まされないこともあるようです。

私と家族は痛みと戦うだけで治癒してきましたが、時には感染症を引き起こすとも言われています。

今回は犬や猫に咬まれたりした際に引き起こす「パスツレラ症(Pasteurellosis)」という感染症を紹介したいと思います。

※一部医療従事者向けの内容となってしまいました

パスツレラ菌について

パスツレラ症を一言で言うと、

「パスツレラ菌(Pasteurella)が引き起こす感染症」

です。

パスツレラ菌?

あまり聞きなれないですよね。

まずはこの菌について知る必要があります。

パスツレラ菌の特徴

・一言でパスツレラ菌と言っても様々な種類がある

パスツレラームルトシダ(Pasteurella multocida)
パスツレラーカニス(Pasteurella canis)
パスツレラ-ダグマティス(Pasuteurella dagmatis)
などなど

・哺乳類の上気道や消化管に存在する

・猫はほぼ100%、犬は約75%がパスツレラ菌を持っている

・犬や猫では感染症を引き起こさない(保菌のみ)

・パスツレラ菌を持っている動物に咬まれたりすると人間に感染することがある→パスツレラ症を発症

パスツレラ症について

それでは次にパスツレラ症について見ていたいと思います。

※一部医療従事者向けの文章あり

パスツレラ症の症状

実際に人間がパスツレラ菌に感染してしまった場合の症状を見てみます。

・受傷部位→発赤、腫脹、熱感を伴う

・発熱を伴うこともある

・一般的には皮下組織で炎症が広がり「蜂窩織炎」という状態になる

・傷の深さによっては関節炎や骨髄炎に進展することもある

・易感染者(免疫機能が低下している方)の場合は敗血症などに進展し最悪なケースになることもある

・咬まれたりしなくても、動物との接触でパスツレラ菌を吸い込んで肺炎や気管支炎を起こすこともある

パスツレラ症の治療

治療は早期の抗菌薬投与が推奨されています。

AMPC/CVAやLVFXなど

一般的にペニシリンに感受性ありですが、混合感染であることもあるので比較的広域な薬剤で始まるのがベター。

単独感染と判明すればABPC等使用可。

※蜂窩織炎=第一世代セファムやCLDMと考えるかもしれませんが、これらは無効であるので注意が必要です。
感染症プラチナマニュアル2020より

犬や猫に咬まれた=パスツレラ症ではない

「犬や猫に咬まれた=闇雲に抗菌薬を開始する」のではなく、投薬前に適切な培養を提出する必要があります。

犬や猫に咬まれた=パスツレラ症

ではないのが現実です。

今回はパスツレラ症のみの紹介ですが、実際に犬や猫に咬まれた場合に想定される菌は他にもたくさんあります。

例えば「黄色ブドウ球菌」や「連鎖球菌」などなど…

原因菌が違うと使用すべき抗菌薬も変わってきますので、原因を突き止める意味でも必ず培養は必要です。

パスツレラ症の予防は?

教科書的に書くと、

・ペットと一緒に寝ない

・ペットを寝室に入れない

・ペットとキスをしない

・ペットと口移しをしない

などなど

世の中には本当にペットのことが好きすぎて過度なスキンシップをとっている方もいるようですが、そういった方はハイリスクと言えるのかもしれません。

今話題のソーシャルディスタンスは人間同士だけではなく、ペットとのディスタンスも考えた方が良さそうです。

もちろんペットと触れ合った後の手洗い・うがいも有効ですよ!