薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

腎不全患者へのパキロビッドパックの投与量について

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令和4年2月10日に新型コロナウイルス感染症の治療薬として特例承認されたパキロビッドパック。


相互作用が多くて使用する際に注意が必要だと認識している人は多いかと思いますが、腎機能に応じて減量が必要なところも重要なポイントです。


しかもパック製剤なので、減量調剤の時は一工夫が必要なようで…。


この辺りをまとめていきたいと思います。


パキロビッドパックの入手方法については下の記事を参考にして下さい。

www.yakuzari.work

腎不全患者に対するパキロビッドパックの投与量


まずは通常量を把握しておかなければいけませんね。


以下は添付文書より抜粋です。

通常、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、ニルマトレルビルとして1回300mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与する。


ニルマトレルビルは1錠150mg、リトナビルは1錠100mgとしてパッケージングされているので、朝と夕にニルマトレルビルを2錠ずつ、リトナビルは1錠ずつ内服というのが通常量となります。


それに対して、腎不全患者の方への投与量は下記のように記載されています。

中等度の腎機能障害患者(eGFR[推算糸球体ろ過量]30mL/min以上60mL/min未満)には、ニルマトレルビルとして1回150mg及びリトナビルとして1回100mgを同時に1日2回、5日間経口投与すること。重度の腎機能障害患者(eGFR 30mL/min未満)への投与は推奨しない。


つまり、リトナビルは減量不要だけどニルマトレルビルは半量への減量が必要となります。

腎不全患者に対するパキロビッドパックの減量方法について


減量基準が添付文書に記載されているので、検査値さえしっかり確認・把握できれば減量の提案や監査を行いやすいのですが…


パキロビッドパックには一つネックなポイントがあります。


それは…


パック製剤なところです。

パキロビッドパックの製剤見本
製剤の模式図


上の写真はRMP資料として公開されている「パキロビッドパックによる治療を受ける患者さん・患者さんのご家族の方へ」から抜粋した製剤の模式図です。


左半分(黄色い部分)が朝に内服する分で、右半分(青色の部分)が夕方に内服する分で、これで1枚のシートになっています。


「1枚のシート=1日分の薬が入っている」ということになります。


(C)と書かれている部分にリトナビルが、(B)と書かれている部分にニルマトレルビルが入っています。


つまり、通常であれば朝夕それぞれ、Cを1錠とBを2錠の合わせて3錠を内服します。


が、中等度の腎機能障害患者さんにはニルマトレルビルを半量に減量しなければなりませんので、下記のような対応を取ることになります。

パキロビッドパックの減量方法
 


少し分かりにくいのですが、朝夕分のニルマトレルビル1錠ずつ(上の図で灰色に塗りつぶされている部分)を調剤時に抜き取ります。


そして、専用のシール(「患者さん用に薬剤量を変更しています」などと書かれている??)を灰色部分に貼付することで減量を加味した調剤となります。


腎不全患者に対するパキロビッドパックのシールについて


専用のシールというワードが出てきました。


パキロビッドパックの添付文書にも、下のように専用のシールを貼付することと明記されています。

中等度の腎機能障害患者に対する用法・用量が処方された場合、朝及び夕方の服用分それぞれから、ニルマトレルビル錠2錠のうち1錠を取り除き、取り除いた箇所に専用のシールを貼り付けて交付すること。


これだけ見たら、普通に薬と一緒に送付されると思いませんか?


本日、私が勤務している病院にパキロビッドパックの納品があったのですが、、


まさかのシール不在(笑)


箱を開けてもシールなんて入っていないし、箱に貼付されているわけでもなく、、


まずは薬を持ってきてくれた卸さんに確認しましたが、シールのことは何も指示されていないとのこと。


仕方がないので、パキロビッドパック相談センターに電話してみましたがなかなか繋がらず。


ようやく担当者に繋がったと思いきや、


「シールって何ですか?」


と言われる始末。。


添付文書や適正使用ガイドとかに書いてあるシールのことというのを説明するもなかなか分かってもらえず…。


臨時のバイトの人だったのかな??と本気で感じました。。


なんとかシールの存在を分かってくれて、しばらくお待ちくださいと言われて数分後にもらった回答が


「薬品に同封されているはずです」


との回答!


いやいや、同封されてないからわざわざ電話してるんですけど…


と内心思いましたが、


「詳細をお調べして折り返しお電話させていただきます。お返事が翌日になってしまうかもしれませんがご了承下さい」


と言われ自分ももはや諦めムード。


さすがにシールのことを軽んじすぎではありませんか??


添付文書に専用のシールを貼付することと書いてあるのに、その専用のシールの所在をすぐに回答できないというのは不思議でしかたありません。


それとも、当院に納品された薬にだけたまたま不備があったのかな??


いずれにせよ、2/16(水)には回答が来るはずですので、もうしばらく待ってみたいと思います。


腎不全患者に対するパキロビッドパックのシールについて分かったこと


2月15日にメーカーに問い合わせてから早2日が経ちました。


が、なぜか回答がまだ来ません。。


しかしSNSにてある情報を頂きました。


「弊施設には郵送にてきていました」


とのこと!!


どうやら薬とは別ルートで郵送されるみたいです。


ちなみにシールと一緒に市販直後調査のお願いなども同封されているとのこと。


薬は輸入品だから配送方法に相違があるのはある程度仕方ないのかもしれませんが、少なくても初めて納品があってから3日経ってもシールが私の施設に届いていないのは果たしてどうなのだろうか…。


添付文書に「専用のシールを貼付すること」なんて文言をつけるのであれば、タイムリーな配送をお願いしたいですね。。