薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

薬剤師的に気になったツイートに対する考えを勝手に述べます

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なんとなくブログを書いていると自分が薬剤師であることをつい忘れてしまう薬ザリです!

今回は久しぶりに病院薬剤師として働いていて少し気になる文章を見つけたので自分なりの解釈を述べてみたいと思います。

ちなみに、その気になる文章の出所は

「Twitter」

です。

最近Twitterのタイムラインを何気なく眺めていたらなんとなく目にとまったツイートがあります。

後発品変更不可に毎回チェックを入れてくる病院は、その患者が他の病院に入院したら平気でジェネリックに変えられているのをどう考えてるのだろうか(笑)

こんな感じのツイートだったと思います。正直「いいね」を押す気にはなれず、リツイートもしなかったため元ツイートは確認できません。

今回はこのツイートの意味をかみ砕きながら、病院薬剤師としての意見を述べさせてもらおうと思います。

ツイートの意味を噛み砕いてみます

恐らくこのツイートの意味を理解できるのは薬剤師等の医療従事者のみかと思います。

一般の方からすると意味不明な単語が並んでいて「なんのこっちゃ?」と感じるかと思いますので、まずはツイートの解説からしたいと思います。

先発医薬品と後発医薬品(通称:ジェネリック医薬品)について

今国が推し進めていることの一つに「ジェネリック医薬品推進」というのがあります。

CM等でもよく目や耳にすることが多いので「ジェネリック」という単語自体を初めて見聞きする方は少ないのではないかと思います。

しかし、意味が曖昧なこともあるかもしれませんので、簡単に解説を入れていたいと思います。

先発医薬品とは

別名「新薬」とも言われます。つまり新しい薬になります。あるメーカーが長い研究期間と、多額の研究費・開発費をかけて開発されて国の承認を受けて発売される医薬品です。この多額の開発費を回収できるように「特許」「再審査」と呼ばれるものでその権利と利益を守られています。

後発医薬品(ジェネリック医薬品)とは

先発医薬品の「特許」「再審査」期間が終わり、先発医薬品で使用されていた有効成分と同じものを他メーカーが使用して作られた医薬品です。ただし、有効成分は同じであっても、添加物などの違いはあるため「先発医薬品と全く同じ薬」とは私は言い切ることが出来ません。一般的に開発費が先発医薬品ほどかからないため、薬価(お薬の値段)も先発医薬品に比べると格段に安くなります。

「後発品変更不可へチェックを入れている」について

以上を踏まえて、「後発品変更不可へチェックを入れている」を考えてみたいと思います。

例えば、ある外来の診察室で処方箋を書いている医師がこんなことを考えて処方箋を書いたとします。

「この患者さんは高血圧だから、高血圧に効果がある「A」という薬を処方しよう!!」

この時に書かれた処方箋を手に患者さんは近くの調剤薬局に行って処方箋を提出します。

提出された調剤薬局の薬剤師はこの処方箋を手に取り、こんなことを考えます。

「「A」という薬か。この患者さんは高血圧なのかな?うちの薬局には「A」という有効成分が入った薬は先発医薬品も後発医薬品も扱っているけど、国は後発医薬品の使用を推進しているから、患者さんと話をして「A」という有効成分が入った後発医薬品で調剤しよう」

このようなことを考え、患者さんに説明し最終的に後発医薬品が調剤されることになります。

こうなると、最初に「A」という薬を処方箋に書いた医師は患者さんに先発医薬品が渡ったのか、後発医薬品が渡ったのかが分かりません(正確には事後報告することとなっていますが、少なくてもタイムリーには分かりません)。しかし「後発品変更不可へチェックを入れている」場合は違います。読んで字の如く、処方箋には「A」と書いてあるけど、「A」の後発品は患者さんに渡さないでね。必ず先発医薬品で調剤してね。という謂わば指示です。このチェックが入っていることで調剤薬局では先発医薬品を選ばざるを得ないことになります。医師として何かしら理由があって必ず先発医薬品でないといけないような場合はこのチェックを入れることで指定することが出来ます。

つまりツイートの内容としては、ある病院の処方箋をよく受け取る調剤薬局の薬剤師が「毎回後発品変更不可にチェックを入れている病院」を笑っているわけですね。

このツイートの最後に(笑)がある理由

では、次になぜ笑っているのかを考えてみたいと思います。

当然ですが、理由は「その患者が他の病院に入院したら平気でジェネリックに変えられているのをどう考えてるのだろうか(笑)」にあります。

想定される場面としてはこんな感じでしょうか?

毎回「後発品変更不可へチェックを入れている」処方箋を持ってくる患者さんには当然先発医薬品を調剤します。

しかし、その患者さんがある日、普段かかっている病院とは全く違う病院に入院したとします(例えば骨折してしまった等)。そうなると、骨折の治療が行われるのは当然ですが、普段治療を受けていることも並行で行われます。先ほど高血圧という例を出しましたが、骨折したからと言って高血圧の飲み薬をサボって良いわけではありません。あくまで高血圧の加療も受けながら骨折に関しての治療も受けるような形になります。

このような場合、特段の理由がなければ「A」という薬を入院中も継続して飲み続けてもらうのが一般的かと思いますが、入院が長期になったため患者さんの手元に「A」という薬が無くなったとします。そうなると当然「A」という薬を準備しなければならないのですが、ここでひとつのルールがあります。

「病院に入院している間は、基本その他の病院を受診して処方箋を発行してもらうことは出来ない」

です。つまり、入院している間は普段通っている病院や調剤薬局に行くことが出来ません。厳密に言えば不可能ではないのですが、一般的にはNGとされています。そのため、入院している病院で「A」という薬を準備することになるのですが、ここが問題です。

調剤薬局というのはいろいろな病院のいろいろな処方箋に応需するために同じ「A」という成分の薬を先発医薬品、後発医薬品含めて複数種類準備しているのが一般的です。しかし、病院は事情が違いまして、よほどの理由がなければ「A」という成分の後発医薬品しか置いていないことが多いです。もしくは、先発医薬品のみしか置いていないかのどちらかです。つまり、「A」という成分の薬を複数種類置いておかないのが一般的(もはや常識?)です。

ですので、入院している病院で「A」という薬の処方箋が出た場合、問答無用で病院に置いてある「A」という成分の薬が調剤されます。これが後発医薬品なのか先発医薬品なのかは指定することが出来ません。

つまり「その患者が他の病院に入院したら平気でジェネリックに変えられているのをどう考えてるのだろうか(笑)」の真意としては、病院では先発医薬品と後発医薬品両方を取りそろえていることはまずないため、高率で勝手にジェネリック(後発医薬品)に変えられてるよ!それはチェックを入れている先生からしたら良いのですか?というのを多少皮肉ったツイートとなります。

国として後発医薬品の使用を推進されている状況を考えればある程度このツイートを理解できるのかもしれませんが、私は少し意見が違います。

このツイートに対する薬ザリの考え

薬剤師のジェネリックに対する意見

高血圧である病院にかかって「A」という有効成分の先発医薬品を調剤されていた患者さん。

外来に通院している間の主治医は当然「A」という薬を処方している医師です。

この医師が何らかの理由で「Aは先発医薬品でないとダメだ。後発医薬品ではダメだ。」と考えるのであれば基本先発医薬品での調剤を調剤薬局では強いられます(もちろん医療費圧迫につながるため話し合いの場が持たれるのは全く問題ないと思います)。これは仕方がありません。

しかし、骨折で他の病院に入院してしまった場合の主治医は誰になるでしょうか??

元々通院していた「A」という薬を処方してくれていた医師でしょうか??

私は違うと思います。

入院下に置かれた時点で、入院期間中の主治医は入院先の担当の先生だと思います。例え骨折の治療を行ってくれる先生であっても、入院中の高血圧のコントロールの責任はこの先生にあると思います。

ですので、入院先の新しい主治医が「やはり「A」という薬は先発医薬品ではないと絶対にダメだ!」と言わない限り、病院として取り扱うことを決めた後発医薬品が調剤されますし、その責任は入院先の病院、主治医、薬剤部が負うべきことだと思います。

「他の病院に入院したら平気でジェネリックに変えられているのをどう考えてるのだろうか(笑)」

と言うのは少しずれた疑問のように私は感じます。

どう考えるもなにも、責任の所在が変わっているのだからどうも思わないんじゃない?というのが私の返答です。

この患者さんの骨折に対する加療が終わり無事に退院し、それ以降再度元々通院していた病院にかかり、そこの先生が「先発医薬品で!」と言うのであれば先発品で調剤すれば良いし、入院中ジェネリック医薬品が使われたけど問題なかった、と考えればジェネリックでの調剤を可にすれば良いわけだし。。