薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

ラピアクタとイナビルの有効期間延長!!

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※当記事は医療従事者向け(特に薬剤師向け)となります

ラピアクタとイナビルの有効期間延長
 

私が勤務している院内薬局に厚生労働省からある通達が届きました。

「ラピアクタとイナビルの有効期間を延長して差し支えない」

という内容です。

お知らせ文章と元々の有効期間、そして今回の通知に対する私の考え等をお示しします。

ちなみに該当メーカーにも問い合わせてみましたので、その情報も載せています。

ラピアクタの有効期間延長について

ラピアクタと書いていますが、今回有効期間が延長になったのは

「ラピアクタ点滴静注液150mg」

のみとなります。

ラピアクタにはバッグ製剤も用意されていますが、延長になったのはあくまでバイアル製剤のみですので注意が必要です。

それでは実際の通知を見てみたいと思います。

抗インフルエンザウイルス薬ラピアクタ点滴静注液バイアル150mgの有効期間の延長について

要約すると

塩野義製薬がPMDAに安定性にかかわる試験成績等を提出しました。
その結果を踏まえ、今流通している製品(病院に納品されているもの、卸の在庫含む)の有効期間を5年簡に延長しても差し支えありません。

ってこと。

要は

「医薬品の箱に有効期間が印字されているけど、5年間に延ばして良いよ!」

という通知です。

※ラピアクタ点滴静注液150㎎の有効期間は元々4年間に設定されていました
※ラピアクタ点滴静注液バッグ300㎎の有効期間は以前もこれからも3年間です

イナビルの有効期間延長について

イナビルにも2種類あります。

今回有効期間が延長になったのは

「イナビル吸入粉末剤20mg」

のみです。

イナビル吸入懸濁用160㎎に変更はありません。

抗インフルエンザウイルス薬イナビル吸入粉末剤20㎎の有効期間の延長について

こちらも要約すると

第一三共がPMDAに安定性にかかわる試験成績等を提出しました。
その結果を踏まえ、今流通している製品(病院等に納品されているもの、卸の在庫含む)の有効期間を10年簡に延長しても差し支えありません。

ってこと。

「医薬品の箱に有効期間が印字されているけど、3年間延ばして良いよ!」

という通知です。

※イナビル吸入粉末剤20㎎の有効期間は元々7年間に設定されていました(厳密には7→8→9年と延長してきた経緯あり。詳細は下記参照)
※イナビル吸入懸濁用160㎎の有効期間は以前もこれからも3年間です

ラピアクタとイナビルの有効期間延長に対して思うこと

実は今回の対応は異例中の異例です。

抗インフルエンザ薬はパンデミックに備えて、年々有効期間を延長してきました。

年々安定性試験等を繰り返し、1年検査して1年有効期間を延長する…

この繰り返しで年々有効期間を延長してきた医薬品も中にはあります。

しかし、その時はあくまで安定性が確認できて、それ以降に新しく製造された製品から新しい有効期間が適応となってきました。

少しわかりにくいので参考例を。

例えば…

インタビューフォーム(以下、IF)等で「有効期間:5年間」と記載されている時に製造された、「使用期限:2020年5月」と記載された医薬品が手元にあります。しかし、2020年4月にIF上で「有効期間:6年間」へ改定されました。

この時、IF等の資料上では「有効期間:6年間」に延長されますが、既に出荷されている「使用期限:2020年5月」と記載されている商品の有効期間は2021年5月には延長されません。あくまで手元の商品に記載されている使用期限を遵守する必要がありました

ですが、、

今回の通知では手元にある「使用期限:2020年5月」と記載されている商品も、各施設で「使用期限:2021年5月」と読み替えて良いということになります。

いやーこれは現場では混乱しますよね。。

しかも昨今の新型コロナ騒動でMRさんは院内を自由に行き来できないことが多いかと思います。

現場での周知が後手後手になってしまいそうです。

そこで今回、塩野義製薬さんと第一三共さんにTELで色々と確認してみました。

ラピアクタ「塩野義製薬」の対応

・現在流通しているラピアクタ(バイアル)は有効期間:4年間として使用期限が記載されている。

・厚生労働省の通達を見る限り、商品に記載されている使用期限に1年間を加えて良いと考えられる。

・しかし、今回の通達に関して厚生労働省とメーカー間で厳密なやり取りができているわけではなく、メーカーの立場として1年間加えて良いですよ、と確かなことは言えないとのこと。

・今回の延長については適切に保存している場合におけるという前提条件があり、メーカーとして全医療機関がその適切に保存しているかを確認できるものではないので断言はできないとのこと。

塩野義製薬とのやり取りでの個人的な感想は、

「そりゃそうだ」

です。

今回の通知はメーカーからすると「寝耳に水」なところもあった様子。

しかも通達の日付が5月7日とGW明け直後。

さらに新型コロナ騒ぎで多方面がバタついている中での今回の通知。

しっかりと下準備が出来ている中での通知ではなかったのかもしれません。

イナビル「第一三共」の対応

・イナビルは毎年安定性試験等を繰り返し、少しずつ有効期間を延長してきた経緯がある。

・最新のIFの改定は2019年8月で、その時点で有効期間は10年間と記載されている。

・しかし、有効期間を10年間として使用期限を記載した商品は流通していない。

・現在、卸や各医療機関に流通している商品は有効期間が10年未満のものである。

・今後の対応は現在メーカーで検討中

・商品の製造番号を伝えれば有効期間10年間を加味した新しい使用期限を提示してくれる。

ちなみに、私の病院で在庫されていたイナビルの製造番号は「RWA0113」でした。

使用期限は「2027年1月」と記載されていましたが、今回の件を考慮すると「2028年1月」に延長されるとのこと。

現在流通している商品の使用期限は有効期間が7年、8年、9年として記載された商品が混在しているようで、製造番号で照合するしかなさそうです。

そのうち製造番号と新しい有効期間を示した一覧でも配られるのかな?

ラピアクタとイナビルの使用期間延長について~まとめ~

幸いなことに現在はインフルエンザの流行期ではないため急ぐ案件ではないのですが、情報共有のため今回のやり取りを載せてみました。

みなさんのご施設等での参考にしてみて下さい。

こんな記事もありますのでよろしければ覗いてみて下さい!
www.yakuzari.work