今、医療業界ではセファゾリン(CEZ)と言われる薬が供給されなくなり大変な騒動となっております。このブログでもその騒動が起こった際に記事に書きましたが、相当なアクセス数を集めました。
今回は、この騒動に関して厚生労働省から【事務連絡】という形で通達が出されました。ただの【事務連絡】ではなく、AMR臨床リファレンスセンター協力の元、代替薬リストも提示されているのが特徴です。
PDFファイルとして掲載されています↓↓
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000498133.pdf
セファゾリンナトリウム「日医工」が安定供給されるまでの対応について
今回の通知の特徴は、ただの事実通知ではなく具体的にセファゾリンの代替薬リストが出ているところにあります。その代替薬リストに関しては「AMR臨床リファレンスセンターの協力のもと、作成した」と記載されています。医療関係者としては見逃せない通知となっています
「セファゾリンが安定供給されるまでの対応について」の通知内容
前置き
・セファゾリンナトリウム「日医工」が不足している事実があり、厚生労働省として日医工に早急な供給再開について勤めるように求めている
・同種同効品の販売業者に生産増強の配慮を求めている
・供給再開の目途はたっていない
・代替薬と考えられる薬品に関しても一部供給不足になる可能性がある
→以上のことを厚生労働省として把握されているようです。現場で考えている・起きていることを全て周知してくれている印象です。
代替薬リスト
騒動が起きてから約1ヶ月が経とうとしています。その間の代替薬についてはそれぞれの医療機関の医師・薬剤師・AST(もしくはICT)で考慮されていた病院が多いかと思います。考慮する際には既存のガイドラインなどを参考にされた方が多いかと思いますが、今回はその様々なガイドラインをまとめて一覧にしてくれたような形で発表されています。
周術期予防抗菌薬(セファゾリンを選択する術式の代替薬)
予想通りと言っては申し訳ありませんが、自分が考えていた代替薬に相違ない薬品が羅列されており個人的には一安心しました。
ただし注意しなければならないのが大腸菌に関してです。大腸菌については薬剤耐性が増加しているため「アンチバイオグラムを確認すること」と備考欄に記載されています。
アンチバイオグラムの活用方法・使い方はこちらの記事にまとめましたので、活用方法がいまいちな方はご覧ください↓
治療用抗菌薬(一般にセファゾリンを用いることが多いと考えられるもの)
こちらも大方予想通りではありますが、個人的には「軟部組織感染症」の欄にセファレキシンが記載されていることが大きかったです。
と言うのも、今回のセファゾリン供給停止が決まった数日後に、ほぼ独断で当院では採用していないセファレキシンを購入(臨時採用)していました。こういった資料が厚生労働省から出たということで、代替薬として医師に提案しやすくなるのではないかと考えています。
「セファゾリンが安定供給されるまでの対応について」の注意点
通知自体にも記載されていますが、絶対にこの通りにやらなければならない、もしくはこの通りにやれば間違いない、というわけではありません。あくまで最終決定は医師やAST/ICTにあります。あくまでこの通知を参考にする、というスタンスになります。
つまり「この一覧に記載されている薬剤しか使えない」というわけではないので、その時の薬剤の入荷状況等を考慮して一番適した薬剤を選択するというのは今後も変わりません。
まとめ
「参考程度に」とは書かれていますが、厚生労働省からこのような通知が出ることは現場ではすごく助かります。病院単位で対応を考慮していると、「本当にこの対応方法で合ってるのかな?」「間違ってたらどうしよう…」と思う場面もありますが、このような通知が大々的に出ると安心、そして自信を持って対応できることにつながります。
今回の騒動でかなり活用させてもらっている本です。ちなみに、感染制御認定薬剤師の筆記試験の際にもすごくお世話になった本です。まだチェックしていない方は是非チェックしてみて下さい。
この「セファゾリン問題」には今後も苦戦を強いられそうですが、なんとか患者さんに不利益だけは出ないように対応できたらと思います。