薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

セファゾリン(CEZ)在庫切れ間近!代替薬について確認点をまとめてみた

CEZの在庫が尽きました

以前からこのブログで何度かセファゾリン(CEZ)の供給難について話題にしてきました。

www.yakuzari.work

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実は当院では卸の在庫状況や、院内での無駄な使用を制限していたためか今まで何とか在庫を切らさずに診療が行えてきましたが、GWが終わって在庫を確認してみるともってあと数日程度の在庫しかないことが発覚!!

いよいよCEZなしでの診療が当院でも行われようとしています。この状況下で僕らが行うべき、確認すべきことを自分のためにもまとめておこうと思います。

セファゾリン(CEZ)の代替薬の選定

薬剤師:「先生!セファゾリンの在庫がなくなりました!」

医師:「じゃー代わりは何にしたら良いの??」

薬剤師:「…。」

では話になりません。抗菌薬に詳しい医師であれば自分で「じゃー代わりはセフォチアム(CTM)にしよう!」などと言ってくれるかもしれませんが、大体は上記のやり取りのように何にしたら良いのか聞き返されると思います。

こういう場面では自施設のアンチバイオグラムを確認し、ターゲットの菌の感受性や移行性を考慮して決めるのが原則です。

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その他として各病態・周術期ガイドライン等を自分の中で読み返した上で、下記のような文書が公開されていますので紹介しておきたいと思います。

厚生労働省の事務連絡

厚生労働省からの事務連絡という形で各都道府県等宛てに「セファゾリンが安定供給されるまでの対応」という内容で通達が出ています。ただただセファゾリンが供給難に陥っています、という報告だけではなくAMR臨床リファレンスセンター協力の元に代替薬リストまで提示されているのが特徴です。もしまだ目を通していない人がいれば一度は目を通しておきましょう。

セファゾリンナトリウム注射用「日医工」が安定供給されるまでの対応についてー厚生労働省

IDATEN世話人よりCEZ代替案

感染症の勉強をしている薬剤師であれば知らない人はいないであろう、IDATENの世話人の先生方が代替案を提示してくれています。

この代替案のすばらしいところは、腎機能障害患者への推奨投与量や手術時の追加投与の間隔まで言及してくれているところにあります。必ずチェックしておきたいところです。

IDATEN世話人会からのセファゾリン代替え案

代替薬の確保

なんとなくセファゾリンの代替薬については選択できたとします。しかし今回のセファゾリン騒動はこれだけでは手に負えず、代替薬の流通状況も確認しておく必要があります。

代替薬としてセフォチアム、スルバクタム・アンピシリンが候補として挙がったとします。この2剤の流通状況はどうでしょうか??当院の場合ですが、両剤ともに「今までの実績分以上の納品は難しい」と卸・各メーカーより通達が来ています。

つまり、

「今までの使用量であれば納品できますが、それ以上に増えてくると欠品します」

と宣告されてしまいました。こういったケースは今回の件に限らず、既存の取引先を第一に考えて在庫をコントロールしなければならない卸・メーカーからしたら当然の手法であり、珍しいことではありません。

こういった状況のため、院内で使用していたセファゾリンを全て同じ抗菌薬に置き換えるということはほぼ不可能であり、なるべく分散させる必要があります。

分散させる際になるべく現場が混乱しないように、診療科で分ける・病棟で分ける・同じ診療科でもAという手術とBという手術で分ける、などなどの工夫が必要かと思います。

周術期の感染予防の代替薬使用時の注意点

代替薬を選定し、いざその代替薬を使用するとします。外来や病棟、手術室で主に使用されるかと思いますが、個人的には手術時の使用には少し注意した方が良いのかなと考えています。

病棟などでは日ごろから様々な抗菌薬が使用されており、処方する医師や点滴を実施する看護師も慣れていることが多いですが、実は手術室のスタッフはだいたい同じような抗菌薬しか目にしていません。そのため、基本だと思うことでも改めて薬剤部から注意点をまとめた資料を手術室のスタッフに配るなどの声掛けが必要かと思います。

代替薬の投与スピード

抗菌薬は30分程度で投与されるのが一般的ですが(異論はあるかと思いますが、実際の状況として)、投与速度が速すぎると患者に思わぬ副作用が出ることがある抗菌薬も中にはあるので注意が必要です。

バンコマイシン(VCM)

こちらは超有名だと思います。
急速投与することでRed neck syndrome(レッドネック症候群)の出現率が上がると言われています。必ず1時間以上かけて(用量によっては2時間以上かけて)投与するようにしましょう。

クリンダマイシン(CLDM)

こちらは知らない医師・看護師もチラホラいるようです。
急速投与することで心停止を来たす恐れがあるとされています。必ず30~60分程度かけて投与するようにしましょう。

術中の追加投与について

手術中の血中濃度を保つために、手術何時間ごとに術前に投与した抗菌薬を追加投与しましょうという手法があります。この何時間という時間は、抗菌薬とその患者の腎機能毎(CLDMは腎排泄ではないため関係なし)である程度決められています。こちらの情報は、上記で紹介したIDATEN世話人のCEZ代替案に記載されているので、そちらを参考にしてみて下さい。

まとめ

・様々な資料に目を通して代替薬を選定する
・代替薬の流通状況も確認する
・代替薬の基本的な使い方を関係各所に周知しておく必要がある
・術中の追加投与の間隔もしっかりチェックしておく

最後に僕が参考にしている書物を何点か紹介しておきます