※当記事は医療従事者(薬剤師等)向けの記事となっています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関してある薬が注目を浴び始めています。
その薬は「カレトラ」というHIVに対する薬。
本来はHIV患者さんが内服する薬ですが、この薬がCOVID-19に効くかもしれないとのこと(国立国際医療研究センターでも使用されたとの報告あり)でSNSのタイムラインなんかでもちらほら見かけることがあります。
当院(国立国際医療研究センター)における新型コロナウイルス(2019-nCoV)感染症患者 3 例の報告
今後どのように国内でCOVID-19が流行するかは分からないですが、一般病院でも治療しなければならない事態になる可能性も多々あります。
そのようなときに「カレトラ」という薬を選択する状況もあるかもしれません。
いざというときに焦らないためにも、ここでは「カレトラ」についての基本情報を見ていきたいと思います。
※当記事は新型肺炎に対して「カレトラ」の使用を勧める意図は全くありません。
カレトラの基本情報
まずは添付文書の内容を一部抜粋して内容をざっと見ていきたいと思います。
商品名
カレトラ配合錠
成分名
ロピナビル・リトナビル(配合剤)
効能効果
HIV感染症
用法用量
通常、成人には1回2錠を1日2回、又は1回4錠を1日1回経口投与する。
なお、体重40kg以上の小児には1回2錠を1日2回投与できる。
※本剤は食事の有無にかかわらず投与できる。
禁忌
・本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
・次の薬剤を投与中の患者:ピモジド、エルゴタミン酒石酸塩、ジヒドロエルゴタミンメシル酸塩、エルゴメトリンマレイン酸塩、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩、ミダゾラム、トリアゾラム、バルデナフィル塩酸塩水和物、シルデナフィルクエン酸塩(レバチオ)、タダラフィル、ブロナンセリン、アゼルニジピン、リバーロキサバン、ロミタピドメシル酸塩、リオシグアト、ボリコナゾール、グラゾプレビル水和物
・腎機能又は肝機能障害のある患者でコルヒチンを投与中の患者
相互作用
・シルデナフィン(バイアグラ)、シンバスタチン、アトルバスタチン、イトラコナゾール、ニフェジピン、クラリスロマイシン、タクロリムス、シクロスポリン、エベロリムスなど→これら薬剤の血中濃度が上昇する恐れがあるため
※薬品は一部抜粋
重大な副作用
高血糖、膵炎、出血傾向、肝機能障害、徐脈性不整脈、TEN、Stevens-Johnson症候群、多形紅斑など
カレトラの腎不全患者への投与方法は?
いくつかの資料を見てみましたが、意見は総じて
「減量の必要なし」
です。
大部分がCYPで代謝されるので、腎機能に応じて減量等は不要とされています。
ちなみに透析患者に関しても減量の必要なしとされています
→PBR(タンパク結合率)が97.4~99.7%(IFより)となっているので当然といえば当然。タンパクと結合している薬剤は基本透析では除去できませんので。
※参考資料
腎機能別薬剤投与方法一覧(日本腎臓病薬物療法学会)
腎機能別薬剤投与量ポケットブック(第2版)
カレトラに関して気になるところ
単純にカレトラに関して私が気になるところを書いてみます。
と言いますか、おそらく私だけではないと思いますが…
何と言っても相互作用が気になって仕方ありません。
今回は一部のみの記載としましたが、実際の添付文書には多数の薬剤が羅列されています。
今回のCOVID-19に関する様々な報告を見てみると、重症化している方は何かしらの基礎疾患があったり、高齢の方が多いというような内容が多く見受けられます。
基礎疾患があるor/and高齢者…
これって普段から何かしらの薬剤を服用している方が必然的に多くなるのでは?
と思います。
仮にCOVID-19に感染して肺炎を起こしたからと言って、普段服用している薬剤を全て中止するわけではありません(もちろん状況によると思いますし、主治医の判断となりますが)。
想定されるのは
普段の薬剤も服用しながら「カレトラ」も追加して服用してもらう
ことになるのでは?と思います。
そうなると、ここは薬剤師の仕事です。
普段から「カレトラ」を使い慣れているHIV患者をよく診る病院であれば問題ないのかもしれませんが、一般病院ではなかなか「カレトラ」に触れる機会がありません(ちなみに私は薬そのものも生で見たことはありません)。
そこで相互作用のチェックは必須となります。
もちろん添付文書に記載されている薬剤の有無から始まり、相互作用の作用がCYP3Aに関してなので、記載されていない薬剤にも当然気を付けなければならないものが多数あるかと思います。
具体的にはCYP3A4、3A5、3A7の代謝を競合的に阻害します。
この3種のCYPで代謝される薬は数知れず…
ここで参考図書を一つ紹介します。
この本は私自身大変重宝しています。
様々なデータが掲載されており、いろいろなパターンでの相互作用をある程度推測できるような内容となっています。
(中身を公開すると怒られるので、軽い紹介に留めます)
さらに、TDM可能な薬剤と飲み合わせるときには、頻回にTDMを行なった方が賢明でしょう。
添付文書に記載されていない薬剤でも多々相互作用を起こしうるのがCYP3Aです。
「念には念を」
という意識を常に頭に入れながらケアしていく必要がありあそうです。
新型コロナ関連の記事はこちら↓
www.yakuzari.work
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