待ちに待った「アンサングシンデレラ」の第2話。
公式Hpで第2話のストーリーを予習してみると、どうやら複雑な(?)親子関係と(医療用)麻薬が絡んできそうな…。
録画しておいたドラマを見ながら、現役病院薬剤師としての感想や考えをまとめてみたいと思います。
- アンサングシンデレラによる「利き薬」について
- アンサングシンデレラの元に「麻薬取締官(マトリ)」が!!
- アンサングシンデレラによるクラリスロマイシン
- アンサングシンデレラが気付いた薬剤の過剰摂取
- アンサングシンデレラ第2話の起承転結を冷静に振り返ってみる
アンサングシンデレラによる「利き薬」について
まずは葵が行っている「目隠しの利き酒」ならぬ「目隠しの利き薬」の場面。
メイアクト
と
フロモックス
を目隠しして両剤を順番に口に入れ、最初に口に入れたのがメイアクト(バナナ味)で2回目がフロモックス(イチゴ味)と言い当てる場面。
例え2択であってもしっかりと正解するあたりはさすが「ヘンタイ」薬剤師の葵。
利き薬≒薬の味見に関して病院薬剤師が思う事
さて、似たような場面は原作でもあります。
薬剤師は「薬に関して変態」とより一層世間に思わせた場面かと思いますが、今回も堂々と世間に知らしめてくれました(笑)
実際の現場でも、新薬が出たら味見をしてみる、内服した感じを実感してみる薬剤師は多数います。
ですが、ここでは味見も100%安全な行為ではないということを敢えて伝えたいと思います。
どういうことか??
下で紹介します。
薬の味見も100%安全というわけではありません
※ここで紹介する内容は私が知り合いの薬剤師から聞いた話しで、実際に自分が遭遇した場面ではないので詳細は分かりません。あくまで流れだけ汲みとっていただけたらと思います。
病院実習に来ていた薬学生。
実習先の薬剤師のおススメで、ある薬剤の味見をしてみました。
すると、その日のうちに全身に発疹が出現。
病院で診察を受けたところ「薬疹」との診断。
適切な処置を受けて事なきを得た。
という流れです。
この時は薬疹(=薬を内服したり注射したりすることにより生ずる発疹)だったのが不幸中の幸いで、ショック等が起きてしまうと大変なことになります。
さすがに味見をさせる前に副作用歴の確認はしたとは思いますが(もししていなければ論外)、それでもリスクがゼロではないということを私達薬剤師側の人間は意識する必要があると私は考えます。
アンサングシンデレラの元に「麻薬取締官(マトリ)」が!!
ある日のAM、突如薬剤部長である販田(真矢ミキ)の元に麻薬取締官(マトリ)が来るとの一報あり。
薬剤部内は騒然とし、すぐさま調剤室と麻薬管理室の(医療用)麻薬の数を確認するも、麻薬管理室の「フェンタニル」が1本足りない!!
しかし、その後新人相原の活躍により難を逃れます。
医療用麻薬の取り扱いについて思う事
個人的にはこれはダメだろ~と思わせる場面が一カ所ありました。
それは、この場面です↓↓
マトリが「フェンタニル」を数えているところを、半ば諦め半分でボーっと見ていた販田部長。
そこに、病棟に保管されていた「フェンタニル」を1本持って駆けつけてきて、体の後ろに手を組んでいる販田部長の手にそーっと「フェンタニル」を手渡すこの場面。
麻薬をこんな渡し方で渡すわけないだろ!!
と声を大にして言いたいです。
後ろに手を組んでいる状態で手渡す=販田部長からは視界に入っていない
状況です。
この手渡しの場面で、もし「フェンタニル」を落下させて割ったらどうすんの????
突如手にアンプルを渡された販田部長が驚いてフェンタニルを落下させたらどうすんの??
おそらく薬剤師であれば、このノールックでの麻薬(特にアンプル製剤)の受け渡しのあり得なさに納得してくれるはず。
普段の業務でノールックでアンプル製剤の麻薬を手渡しされた日には、私であれば後輩先輩関係なく怒鳴りつけるレベルです。
そう考えると、販田部長だけではなく下手したら相原のクビまで持っていかれる場面です。
ですが、冷静に考えるとこの場面は相原だから許された感はあるかもしれません。
もしノールックで手渡しするのが葵であればバッシングものだけど(病院薬剤師歴8年であれば医療用麻薬の扱い方は熟知されているはず)、新人の相原であればなんとなく許してしまう風潮を利用したものなのか。
ちょっと考え過ぎの感も否めませんが、こんな感じてドラマの裏を探るのも楽しいですね(笑)
そしてこのマトリの場面に関してですが、そもそも病院に抜き打ちでマトリの人がチェックすることってあるのかな?
12年ほど病院で勤務していますが、マトリの方が院内に来たという話は聞いたことがありません。
少なくても普段チェックしているのは保健所かと思います。
保健所と言うよりマトリと言った方が世間的にインパクトがあるためそのようにしたのか、、それとも地域によって管轄が違うのか、、正直いまいちハッキリしないところです。
アンサングシンデレラによるクラリスロマイシン
マイコプラズマ感染症に罹患している山口礼央君。
マイコプラズマに対する特効薬であるクラリスロマイシンと、去痰薬であるカルボシステインが処方されています。
刈谷(桜井ユキ)が礼央君のお母さんに服薬指導するが、その場でスマホを開けて薬剤情報を調べて刈谷に副作用のことに関して質問するも
「ネットの情報に惑わされるのが一番危険です。」
と言って冷たい感じで服薬指導が終わります。
その後実際に礼央君が薬を内服しようとするのですが、
「まずくて飲めない!」
と言ってなかなか薬を飲むことが出来ません。
そんな礼央君の相手をしているお母さんは仕事等もあり疲弊しきっているのが手に取るように分かります。
薬が上手に飲めていないためか、マイコプラズマがなかなか治らず再度病院へ。
「もう少し頑張ってください」
という医療従事者側からのセリフにイライラが隠せないお母さん。
そこで再度刈谷が薬を渡しに行くが、
「少し時間ありますか?」
と引き止め、「ヘンタイ」葵にオレンジジュースとチョコレートアイスを渡して山口レオ君の服薬指導を指示します。
すぐにその意図を汲んだ葵は相原を連れて礼央君のお母さんに薬の味見をしてもらいます。
礼央君のお母さんも試していたオレンジジュースに薬を混ぜてみると、、
クラリスロマイシン(元々はすごく苦い薬)の苦みを隠すためのコーティングがとれてクラリスロマイシン本来の苦みが表面に出てきてしまい、とてもではないけど子供が飲める代物ではありません。
この体験を通して礼央君に、こんあ苦いものを無理やり飲まそうとしてごめんね!とお母さんの一言。
どうやら礼央君もそんなお母さんを許した模様。
その後、葵からチョコレートアイスと一緒だと飲みやすいというアドバイスで解決。
その後礼央君はしっかりと内服できて、マイコプラズマも快方に向かうことでしょう。
子供に薬を飲ませる際には是非薬剤師に相談を
当院では小児科がないので、私自身は親御さんの苦労を目の当たりにしたことがありません。
私には今年小1になった息子君がいますが、息子君は内服に関しては全く手がかかりませんでした。
普通に粉の薬(ドライシロップ含む)を口にいれて、その後水で飲みこむという大人顔負けの飲みっぷりを毎回披露してくれているので、息子への与薬に関しては全く苦になったことがありません(さすが薬剤師の息子(笑))。
それでも今回の話で出てきたように、子供が薬を飲んでくれない!ということで悩まれている親御さんは本当に多いのではないかと想像できます。
ここで言いたいことは、、
もっと薬剤師を頼って下さい!!
ということ。
これはドラマでも葵が言ってましたね。
薬剤師は所詮「薬のヘンタイ」なので、薬に関しての問いかけに関しては全力で答えてくれるはずです。
時には刈谷(桜井ユキ)のような方もいるかもしれませんが、刈谷も患者を冷たくあしらっているわけではありません。
患者一人一人ではなく、患者さん全体のことを考えての行動であることを考えれば、彼女の合理的な行動と言わざるを得ません。
ですが最終的には葵を適任としてしっかりとケアまでこじつけている辺りはさすがですね!
アンサングシンデレラが気付いた薬剤の過剰摂取
右上腕骨骨折で入院中の大宮さん。
普段内服している薬はないと葵に言い張るが、トイレで何か(白い錠剤)を大量に内服。
その後トイレで倒れているところを発見され、救命へ運ばれていきます。
頻脈で、呼吸は挿管が必要なレベルで、アミオダロンを投与していることを考えても致死的な不整脈が出ていることが伺えます。
救命の先生があらゆる治療を行ってもなかなか状況は好転せず。
よもやカウンターショック(電気的除細動)を行うか?という場面で、瀬野(田中圭)が葵の情報を元にロペラミドの過剰投与による症状ではないかと結論付け、拮抗薬であるナロキソンを医師に提案。
無事にその提案は受け入れられ、その後症状は安定。
大宮さんは九死に一生を得ます。
その後の展開で大宮さんは骨肉腫を患っており、抗がん剤治療を受けていることが分かります。
その抗がん剤の副作用である下痢が強く出てしまい、その下痢を止めるために緩下剤としてロペラミドが処方されていたという裏事情がありました。
ここではあまり触れませんが、20年もの間音信不通だった娘との(父娘)関係が、葵の介入により良好になったことが伺えます。
名探偵コナン以来の名場面??
ここでもまず言いたいことは「薬の味見」の場面です↓↓
こんなの名探偵コナンだけかと思っていましたが、まさか現代のドラマでまたお目にかかるとは(笑)
この葵の「味見」のおかげで大宮さんが普段内服している薬がロペラミドということを突き止め、結果として大宮さんの救命に繋がるのですが、、
正直こんな薬剤師はいません。。
大宮さんの娘と一緒ではあっても基本的には他人である葵が大宮さんの部屋に入り、そこで偶然ゴミ箱に入っているジップロックの中に裸錠の状態で入っている薬を発見し、そして味見する。。
薬の味に関して「ヘンタイ」な薬剤師は多くいるかと思いますが、間違っても活用すべき場所はここではありません。
※本当の使いどころとしての良い例は、やはり先述したクラリスロマイシンのようなケースだと思います。
さらに錠剤の識別番号が途切れているため薬の種類が判別できないということでしたが、これだけ分かってたら後は何とか調べれば行きつくような気がします。
まー、これに関しては1分1秒を争う中で調べものをするより、味見をすることで候補を絞れたからロペラミドという答えに行きつき、そのおかげで命を救えたとも解釈することが出来ますが…
少なくても一般的な行動ではないことだけは強調しておこうと思います。
アンサングシンデレラ第2話の起承転結を冷静に振り返ってみる
今回も内容が濃く、さらには展開も早いので見ている側にとってはあっという間の1時間15分でしたね。
ドラマというのは1つの事象に関して「起承転結」を作っていくものと私は解釈しています。
そしてその1つの事象はせいぜい1話に1つであると思っていましたが、、
アンサングシンデレラは1話の中にいくつもの事象、つまり起承転結を用意してくれています。
そう考えると飽きるわけがない!
ですよね。
しかし、個人的にはその起承転結に関して粋な演出があったと思いますのでそこだけ紹介して今回のレビュー記事を閉じたいと思います。
私が感じた粋な演出
大宮さんがトイレで倒れた場面と、麻薬取締官(マトリ)が来るということで(医療用)麻薬の数を調査している場面が同時進行で話しが進んでいました。
しかも大宮さんが倒れた後、
「頻脈で呼吸も浅い」
というセリフまでありました。
この流れを考えると、一部の医療従事者(おそらく薬剤師や医師)の中には下記のようなストーリーを頭に思い描いた人もいたのではないでしょうか??
麻薬取締官が来る→(医療用)麻薬の実際の在庫数が、帳簿上の在庫数より少ないという展開になる?→在庫数が少ないということは、(医療用)麻薬が何者かに盗まれた→盗まれた(医療用)麻薬を大宮さんが飲んだ→(医療用)麻薬の過剰摂取による中毒症状として大宮さんが倒れた
呼吸抑制、医療用麻薬
このフレーズを見ただけで上のようなストーリーを思い描いてしまった一部の医療従事者(少なくても私はその中の1人です(笑))が多かったと想像しますが、
この予想したストーリーを見事にロペラミドで覆してくれました!!
ストーリーが進んだ段階で在庫数が合わないのが「フェンタニル」という注射剤であったことが分かり、その時点で大宮さんとは関係ないのかな?と気付けた方もいるかと思いますが、この展開は起承転結で言えば完璧に一本取られました。
私個人としてはそのように思ったのですが、冷静に考えてみると一般の方にはこの起承転結は伝わらないはずです。
この展開に一本取られる人は(医療用)麻薬に関して多少知識がある人だけなんです。
(医療用)麻薬のことを詳しく知らない方からすると、おそらく大宮さんの話とマトリの話は全くの別次元で進んでいる話しとしか思いません。
つまり、この2つの事象につながりがあるかもしれない?と思えるのは医療従事者だけです。
もしこれらのことを計算して物語を作っているのであれば、第3話以降の話もより一層楽しめそうと期待度が更に高まりそうです。
そして最後に小言を一つ。
瀬野副薬局長(田中圭)が最初ナロキソンの提案を躊躇した意味が分からない。
あの状況であれば試しに投与してみる価値は大いにあったと思うが、、過去に何かナロキソンで大変な目にあったことがあるのかな?
以上小言でした。
…また5000文字を超えるレビュー記事になってしまった。
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病院薬剤師の白衣のポケットの中身を大公開??↓
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