ようやく第3話を見ることが出来ました。
放送されてからだいぶ時間が経っていますが、ゆっくりと自分なりの感想を書いてみたいと思います。
とりあえずの感想は
成田凌さんの演技スゴッ!!
血液透析患者さんにこそ「アンサングシンデレラ」
新田奏佑(浅利陽介)32歳。
職業は小学校職員。
週3回、1回4時間の血液透析を受けている患者さん。
大量の薬を飲みながら、透析がない日は栄養ドリンクを飲みながら残業を繰り返していた。
そんな中、葵みどり(石原さとみ)が勤務している萬津総合病院に救急搬送されてきてそのまま入院となります。
入院後、葵と相原くるみ(西野七瀬)が新田さんが内服している薬を確認したところ、下記の疑問点が浮上しました。
・アダラートCRが半錠調剤されていた
・レナジェルが食後の一包化に入っていた
この疑問だらけの処方を調剤していたナカノドラッグの小野塚綾(成田凌)にTELで問い合わせることで葵vs小野塚が勃発します。
→葵vs小野塚については別途書きます。
その後、生徒のために病院を脱走して運動会の激励の旗(?)を届けようとしたが、学校前で倒れてしまい、小野塚が救急車を手配。
事無きを得ます。
週3回・1回4時間は病院に行かなければならないということで、同僚や生徒の親、そして生徒からも嫌われていると自身の悩みを打ち明ける新田さん。
その後、本来であれば内服しているはずのフェロ・グラデュメットを内服していないことが発覚。
その理由が、この薬を飲むと気持ち悪くなって吐いてしまうから、と確認できた葵は医師に相談のうえ、フェロミア錠へ変更します。
さらに、多忙などの理由から薬を今までのようにバラバラに管理するのではなく、お薬カレンダーを利用してみてはと提案。
カレンダーにセットするのも面倒になるという新田の訴えに対して一工夫をすることで、お薬カレンダーを一生の宝物にするとまで言わせてみせます。
案の定、エンディングにてしっかりと薬を管理できている新田さんの描写があり、生徒との関係も良好である様子が伺えます。
血液透析患者さんの薬について少し触れます
今回もいろいろな要素が絡み合っていて、私の国語力ではストーリーをまとめるのも一苦労です(笑)
腎臓は
・体の中の水分を体外に出す、それと同時に体内の老廃物も外に出す
・貧血にならないように働くホルモン(エリスロポエチン)を作る
他にも様々な働きをしてくれている大切な臓器の一つです。
これらの機能がうまく働かなくなった時、人は血液透析を始めとした「腎代替療法」を行いながら、薬で様々な調整を行っていきます。
それらの調整のうち、2つの事柄に関して触れらていた今回。
一つずつ紹介します。
貧血について
腎臓が悪くなる=エリスロポエチンが作られなくなる=(腎性)貧血になる
これらをそのままにしておくと当然貧血が進んでしまうので、薬で補っていきます。
今回登場したフェロ・グラデュメットやフェロミアがその貧血を予防する薬に該当します(エリスロポエチンを補うわけではありません。鉄を補う役割の薬です)。
貧血になったら(ならないようにするために)、鉄を補給する
と聞いたことがあるかと思いますが正にそれです。
フェロ・グラデュメット、フェロミアともに鉄剤であり、どちらとも有名な副作用として悪心嘔吐があります。
今回の新田さんはフェロ・グラデュメットでは副作用が出たけどフェロミアでは出なかった、という描写になっていますが、もちろん反対の人もいます。
両剤ともに副作用が出ない人もいれば、両剤ともに副作用が出てしまう方もいます。
もし自分の患者さんでそれらの副作用が出ている方がいれば、今回の葵のように薬の種類を変えてもらうのも手ですが、実は用法を変えるという手もあります。
ドラマでは朝食後に内服することになっていましたが、それを就寝前にするだけで副作用を感じなくなる人もいます。
もちろん勝手に変更するのは良くないので、自己判断での変更はしないでくださいね。
鉄剤で悪心嘔吐を感じている方は、一度薬剤師に相談してみることをおススメしますよ。
そして、今回の貧血に関しての描写についてどうしても言いたいことがあるのですが…
少し歩いて貧血になるぐらいであれば、フェロ・グラデュメットとかフェロミアがどうのこうのというレベルではなくない??
入院してればそれなりに採血するよね??
そこでフェロ・グラデュメットとかフェロミアをどうこうするではなく、エリスロポエチン製剤(注射)で調節するよね??
もしくは輸血を考慮するよね??
…とドラマに言っても仕方ないですね(笑)
こんな野暮なことを言ってはいけないのかな、とも思いつつ書いてしまいました。。
高リン血症について
今回登場したもう一つの薬。
それは「レナジェル」です。
血液透析患者をよく見る人であれば知らない人はいないであろう、レナジェル。
この薬を一言で表すと、
「透析中の患者さんのリンを下げる薬」
と言ったところでしょうか。
腎臓によってリンという物質の体内バランスは保たれています。
しかし、腎臓の働きが弱まってしまうと、リンをうまく排泄できなくなり体内に過剰に蓄積されることになります。
その状態を「高リン血症」と言いますが、それを是正する薬の一つにレナジェルがあります。
このレナジェルは消化管内で食事と混ざることで効果を発揮します。
つまり、お腹の中で食事と混ざる必要があります。
そのため、レナジェルは食直前に内服し、その後すぐに食事を摂る=お腹の中で薬と食事が混ざる→薬の効果が発揮される
といった筋書きがあります。
ですが、今回の描写では朝食後の袋に他の薬と一緒に入っていたレナジェル。
つまり、食事前に内服せずに食事を摂った後にレナジェルを飲む→お腹で食事と混ざらない→効果が出ない
というストーリーが出てきてしまうため、調剤室にて葵たちは激怒していました。
※実際には食事を摂ってすぐに内服すれば十分効果は発揮すると考えられていますが、一応レナジェルは食直前以外の内服タイミングは認められていません。
血液透析患者さんの内服自己管理について
レナジェルをはじめ、血液透析患者さんに使われる薬は本当にややこしいのが現実で、他には食直後に内服しなければならないもの・食前に内服しなければならないもの、本当に様々なタイミングで薬を飲まなければいけない患者さんが多いのが現実です。
1日に10種類程度の薬を毎日内服しなければいけない人もたくさんいらっしゃいます。
これらをいかに正しく飲めるか。
いかに飲み忘れなく飲めるか。
これらが大事であることは頭ではわかるけど、なかなか実行に移せないんですよね。
仕事だったり家事だったり…患者さん毎に色々な都合があり、なかなか薬の管理を第一に考えられない方が多いのが事実。
そこで役に立つかもしれないものとして、今回の話でも出てきた「お薬カレンダー」。
1週間分をセットするのは少し手間かもしれないけど、そこさえクリアできれば飲み間違い・飲み忘れは確実に減ってくると思います。
「お薬カレンダーを使う方=高齢な方」
というイメージをお持ちの薬剤師さんもいるかと思いますが、本ストーリーのように若い方でも適する患者さんは確実にいるので、今回の話を頭の片隅に入れておいて現場で生かせると良いですね。
「血液透析患者=運動が出来ない」ではない!
今回の話を見ていて気になったところなのですが、
「血液透析患者=運動出来ない」
という先入観を持たせることにならないか?
と少し心配しています。
基礎疾患ゆえに運動制限をされている方や、実際に運動をすることで身体に負荷がかかってしまう方はいらっしゃいます。
しかし、全員ではありません。
なんとなくドラマを見ていると「血液透析患者=運動出来ない」の方程式が強く頭に残ってしまわないかと思いました。
もちろん医師からこの程度の運動は行って良い、というアドバイスを受けた上にはなりますが、全く運動が出来なくなるわけではありません。
「血液透析患者=運動出来ない」という偏見だけは持たないで欲しい。
そのように私は思います。
アンサングシンデレラ vs ドラッグストア薬剤師
「アンサングシンデレラ vs ドラッグストア薬剤師」
つまり、
葵vs小野塚
ですね。
薬剤師同士の小競り合いと言ってしまえばそこまでなのですが、現実でも同様のやり取りを見かけることもあるのが事実。
この小競り合いの内容はほぼドラマが代弁してくれていました。
最終的には葵のこのセリフに心が動かされた小野塚。
「ドラッグストアにも志の高い薬剤師さんはたくさんいます。あなた次第じゃないんですか。どんな境遇にいても理想を必死に追い続けている人はたくさんいるんです」
ま~これは正論かもしれませんが…
なかなか現実でこんなセリフを吐ける薬剤師さんにはお目にかかれませんね。。
この3話で、小野塚はもともと救急の認定薬剤師を目指していた高い志を持った薬剤師の1人だったことが伺えます。
そういった志を心に秘めていた小野塚だからこそ素直に葵のセリフに心を動かされたんでしょうね。
いや~この小競り合いネタは現実にはたくさんあるのですが、暴露すれば暴露するほど薬剤師ってなに?と思われそうなので、自制したいと思います(笑)
最終的には、
「働く場所がどこであろうと、薬剤師なんだから患者さんの事を考えてそれぞれの責務を全うしようよ」
と思う私でした。
最後になりますが、やっぱり成田凌さんの演技力凄すぎ!!
心の中で大きな葛藤を抱え込んでいる様子だったり、心の変化が手に取るように伝わってくるこの感覚。。
スゴイとしか言いようがありませんね。
第1話、2話のレビューはこちら↓↓