先日、2019年8月15日に後発品の承認が下りた薬剤がいくつかありました。
その中で個人的に注目するのはファンガード(成分名:ミカファンギン)とイメンド(成分名:アプレピタント)。
両剤とも高価な薬剤であるが故にDPC病院ではなかなか使いにくいところがありました(薬価を考えて使用するかどうかを決めることはありませんが、費用対効果を考える医師がいるのは事実)。
お盆明けの8月20日にあるメーカーさんから情報を頂いたのでお知らせします。
2019年9月13日:ミカファンギンの効能効果について一部追記
2019年12月19日:両剤の後発品薬価についてと、ミカファンギンの発売予定日を追記
2020年1月20日:ミカファンギンの発売日について追記
ファンガードとイメンドの後発品発売予定のメーカーは今のところ「沢井製薬」
俳優の高橋英樹さんでおなじみのあの沢井製薬です。
担当MRさんが
「実は後発品の承認が出まして~」
と言うので、話しを遮る形で
「ファンガードとイメンドですか?」
と聞いたら
「まさにその通りです!!」
と言われて多少驚きました。
確かに担当MRさんの手に、両製品のチラシをお持ちでした。
承認が下りたことは把握していましたが、メーカーまではノーチェックだったのでお互いビックリ(笑)
他のメーカーの動向は把握されていないとのことでしたが、上の表からすると今のところ沢井製薬のみのようです。
※イメンドは日本化薬の名前もありますが、沢井製薬で製造したものを2社で販売するような形(?)とのことなので物は同じと予想されます
ファンガードとイメンドの薬価をそれぞれ後発品と比較してみる
後発品を採用する際におそらく重要なポイントになるであろう、薬価を比べてみましょう!
以下からは「先発品薬価→後発品薬価」で記載させていただきますのでご了承ください。
25mg/本 3723円→発売なし
50mg/本 4965円→2435円
75mg/本 7077円→3477円
125mg 4919.4円→2025.1円
80mg 3359.4円→1381円
セット(125mgx1+80mgx2) 11638.2円→4787.1円
※セットにしてもしなくても1錠当たりの薬価に差はありません
両剤ともにそれなりに薬価差があるのがお分かり頂けたかと思います。
それなりというか、両剤共に半値以下に設定されています!
決して沢井製薬の回し者ではありませんが、この薬価差を考えると後発品への変更を考慮する余地はあるように感じます。
※少なくても自分の職場は薬事委員会に話が上がる予定です。
ファンガードの使い方
言わずと知れたキャンディン系の抗真菌薬です。ちなみに、よく略語でMCFGと言われます。
有効菌種はアスペルギルス属やカンジダ属に限定され、クリプトコックス属やトリコスポロン属には抗真菌活性はありません。
また、有効とされているカンジダ属の中でも要注意なことがあります。
それは、全てのカンジダ属に対して有効なわけではないということ。
具体的には下記のようになります。
Candida parapsilosisやCandida guilliermondii→低感受性
Candida glabrataやCandida krusei→感受性良好
薬物動態の特徴としては半減期が約14時間と言われており、主な代謝経路は肝臓です。そのため腎不全患者さんにも通常量で使用することができます。
さらに、タンパク結合率が99%以上のため血液透析でも除去されず、透析患者さんにも同一用量で使用することが出来ます。
用量については一概になんとも言えませんが、通常100~300mg/日での使用が推奨されます(病態等により推奨投与量は上下します)。
薬価で考えると9930~28308円/日となります(一番薬価が安くなる規格を使用した場合)。
これらが病院持ち出しとなると(正確には納入価ですが、今回は薬価で考えています)、処方する際に少し躊躇してしまうのも分からなくもありません。
担当MRさんより適応症についての情報をもらいました。先発のファンガードにはあって、後発のミカファンギンにはない適応、それは…「造血幹細胞移植患者におけるアスペルギルス症及びカンジダ症の予防」です。
添付文書のリンクを下に貼っておきますが、この適応で使用する病院はある程度限られてくるかと思います。当院ではこの適応で使用することはないためほぼ関係ありません。しかし、普段からこの適応で使用している病院はしっかりとチェックしなければいけませんね。
【添付文書のリンク】
ファンガード点滴用の添付文書(PDF)
ミカファンギンNa点滴静注用「サワイ」の添付文書(PDF)
イメンドの使い方
「選択的NK1受容体拮抗型制吐剤」
という分類に属する薬です。
小難しい話は置いておいて、平たく言うと吐き気止です。
それでは吐き気を催している方であれば誰でも飲んでいいのかというとそういうわけではありません。
効能として「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」と記載されています。
つまり、抗がん剤治療を受けている人が使用できる吐き気止めとなります。
予防的に使うのが一般的で、抗がん剤治療が始まる日に125mg、翌日とその翌日に80mgを内服します。計3日間を1セットとして内服しますが、状況に応じて80mgを4日目以降も80mgを内服することがあります(成人では5日間を超えて投与した際の有効性・安全性は確立していません)。
抗がん剤の治療スケジュールは多々ありますが、21日を1クール、28日を1クールと数えるメニューがあるとすると、その21日or28日の最初の3日間に上記のようなスケジュールでカプセルを内服します。
薬価で考えると1クールあたり11638円かかります。
イメンドが発売される前。
いろいろな種類の吐き気止めを使用しても抗がん剤治療中の嘔気・嘔吐が収まらない方々をたくさん見てきました。どうしようもしてあげられない、と悔しい思いをたくさんしてきましたが、イメンドが発売されてからは劇的に嘔気・嘔吐で悩む患者さんが減ったように思います。もちろん嘔気がゼロにならないことは多々ありますが、少なくても嘔気・嘔吐の影響で1日中体が優れないと訴える人は減りました。
それくらい画期的な制吐剤と認識しています。
ファンガードとイメンドの後発品が発売されたら
ファンガードに関しては1~3万円/日かかっていた治療も、もしかしたら半分ぐらいになるかもしれません。
→実際に薬価で見ると半分以下になりました!
イメンドについても同様、半分ぐらいになるかもしれません。
→ファンガード同様、実際に薬価で見ると半分以下になりました!
ファンガードの使用の敷居が下がってくれれば、より多くの命を助けることが出来るかもしれない。
イメンドの処方の敷居が下がってくれれば、抗がん剤治療を受けている患者さんのQOL(Quolity Of Life)を上げることが出来るかもしれない。
もしそうなれば、両剤ともに今以上の活躍を見せてくれるのではないかと期待しています。
しかし、昨今特に抗菌薬領域に関しては流通問題が多発しており、ジェネリックへの変更も慎重にならないかもしれません。
発売は12月ぐらいとのことでしたので、それまでもう少し状況を見極めてから検討していきたいと思います(安くても流通に問題があって手に入らないでは話にならないので)。
→ミカファンギンの発売日は2020年3月を予定しているとMRさんから追加情報を頂きました!流通体制を万全に整えてからとのこと。このご時世ある程度仕方ないのかな~ということで、もう数か月先発品で頑張っていこうと思います。
→発売日が社内的(沢井製薬の)に決まったそうです。発売日は2020年3月6日になるとのことです!
今回は沢井製薬からの情報しか把握していない状況で記事を書きました。
今後他社からの情報等が入りましたら、随時アップしていきたいと思います。