薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

オキシコンチンTR錠を慢性疼痛に使用する際の管理体制について

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※当記事は主に医療従事者向けとなっております。ご了承下さい。


2020年10月に慢性疼痛に対して使用できるようになった医療用麻薬である「オキシコンチン®TR錠」の説明会を受けたので、その内容(主に流通に関して)を少しまとめてみたいと思います。


ちなみに今回紹介する流通管理に関しての内容は、主に院外薬局に関してのものとなっています。


院内の薬局に関しては別記事に書きたいと思います。

オキシコンチンTR錠の適応追加に関して

オキシコンチン®TR錠はもともと


「中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛」


という適応を取得しており、いわゆる癌性疼痛に対して使用できる薬剤でした。


ですが、2020年の10月に下記の適応を新たに取得しています。


「非オピオイド鎮痛薬又は他のオピオイド鎮痛薬で治療困難な中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛」


この適応が追加になったことで癌患者さん以外の疼痛に対しても使用できるようになったわけですが、薬剤の成分はオキシコドン(医療用麻薬)であることに変わりはなく、不適切に使用することで依存や乱用に繋がる可能性はどうしても残ってしまいます。


そこで国として・メーカーとして一工夫が必要と判断された結果、これから紹介するような厳格な流通体制が構築されることになりました。

慢性疼痛に対してオキシコンチンTR錠を使用する際の流通管理体制について

オキシコンチン®TR錠の流通体制の概要に関しては塩野義製薬株式会社より資料が配布されています。

オキシコンチンTR錠流通管理体制概要

ここに記載されている行わなければならないことを羅列すると、

 
・処方医はWeb上でe-learningを受講して確認テストに合格する
 
 
・確認テスト合格後に発行可能となる確認書(A4横)を発行する
 
 
・処方毎に毎回上記の確認書を発行し、適切な説明を行った後、患者さんから確認書に署名をもらう
 
 
・確認書の医療機関保管用の部分(左半分)を切り取り、患者保管用と薬局保管用の部分(右半分)を患者さんにお渡しする
 
 
・患者さんは医療機関で渡された確認書と麻薬処方箋を調剤薬局へ提出する
 
 
・調剤薬局の薬剤師は確認書と麻薬処方箋の内容を照合し、確認書記載内容を患者さんへ説明したうえで調剤
 
 
・薬局保管用の部分を切り取り、患者保管用の確認書を患者さんへ渡す
 


となります。。


正直面倒な点もありますが、ひとつひとつ詳細を確認していきます。


オキシコンチンTR錠のe-learningについて


まず大前提として、処方医がe-learnigを受講しテストに合格しなければ何も始まりません。


このe-learningですが、当院担当のMRさん曰く1時間半程度かかるとのこと。


何個かの項目の説明を聞いて、その項目ひとつひとつに確認テストが準備されており、トータルとして1時間半程度かかるとされています。


処方する可能性がある医師には予め受講をおススメしておいた方が良いのかもしれませんね。


ちなみにこのe-learningですが、薬剤師も受講することが出来ます。


薬剤師の受講は今回の流通体制の点では必須となっておりませんが、自己学習等のための受講は可能となっています。


詳しくは塩野義製薬株式会社のホームページをご覧ください。


オキシコンチンTR錠の確認書~発行について~


医師が確認テストを無事に終えると、確認書というものを作成することが出来るようになります。


データとしてダウンロード可能となっているとのことで、ダウンロードして普段の診療時に使用するPCですぐに印刷できるようにしておくと良さそうです。


と言うのも、この確認書は処方毎に毎回発行する必要があります


初回処方時のみ等であれば良いのですが、1週間ごとに受診される患者さんに毎週オキシコンチン®TR錠の処方を行うのであれば、毎週この確認書を発行する必要があります。


注意↓↓

この確認書についてですが、処方医固有のものとなっています。


A先生とB先生がe-learningの確認テストを無事に終えているけど、2人分のデータを保存していると混乱するからA先生の確認書をA先生とB先生で共有する。というのは不可です。

確認書のデータにe-learning受講者の氏名が入っており、後述する確認書と麻薬処方箋の照合の際に指摘されますので共有は不可となっていますのでご注意を。


オキシコンチンTR錠の確認書~発行から患者さんへお渡しするまで~


ここで発行される確認書というのはA4(横)サイズで印刷されます。


※便宜上、A4左側と右側で別々に画像をアップします


確認書左側↓↓

オキシコンチンTR錠確認書「医療機関保管用」
 

確認書右側↓↓

オキシコンチンTR錠確認書「患者保管用」「薬局保管用」
 


左側が「医療機関保管用」となっており右側上部が「患者保管用」、右側下部が「薬局保管用」となっています。


それぞれに確認事項のチェック欄や署名欄(医師、患者、薬剤師)があり、必要事項を記載し終えたこの紙を切り取り線で切り取りそれぞれ保管しなければなりません。


ちなみに…


この保管についてですが、医療機関・患者・調剤薬局いずれにおいても保管期間の規定はありません


極端な話し1日だけ保管して後は廃棄、でもお咎めはないはずです(MRさんも同意見でした)。


ですがおそらく処方箋と一緒に保管することになるので、処方箋の保管期間=確認書の保管期間となる医療機関、調剤薬局が多いのではないかとこと。


もっと言えば原本を保管しなければならないという文言もないため、医療機関であれば「医療機関保管用」の確認書をスキャン等でPDF化して、電子カルテに取り込んで半永久的に保管、ということもできます。


このご時世わざわざ紙の保管物を増やしたいと考える施設はないかと思うので、可能であればPDFを電カルに取り込んでしまうのが一番簡便かと思います。


オキシコンチンTR錠~確認書と麻薬処方箋を調剤薬局に提出するまで~


診察を終えた患者さんは、診察時に医師から渡された確認書(右半分の患者保管用+薬局保管用)とその日に発行された麻薬処方箋を調剤薬局に持参します。


そこで確認書と処方箋を受け取った調剤薬局の薬剤師は、両書類の不備がないかを確認(※1)します。


※1 署名医師は同じか、発行日は同じか、各種サインはされているか、などなど


そこで不備がなければ必要な説明を行って調剤が出来るという流れになるわけですが、、


ひとつ懸念されるのは


「患者さんが麻薬処方箋のみ持参されて、確認書の持参がない」


という場面です。


この場面で想定される背景としては、

 
①処方が癌性疼痛に対してであった場合
 
 
②医療機関で確認書を患者に渡しそびれた場合
 
 
③医療機関で患者に確認書を渡したが患者自身で紛失してしまった場合
 


以上3つがぱっと思いつくところですが、それぞれの対応も簡単に触れておきます。


癌性疼痛であった場合


このパターンが一番単純です。


オキシコンチンTR錠を癌性疼痛に対して処方されている場合です。


今回の厳しい流通体制はあくまで「慢性疼痛」に対して使用する際に必要となるもので、癌性疼痛であれば今までと同様で確認書の発行は不要となります。


確認書を渡しそびれた、紛失してしまった


このパターンは頻発するにではないか?と勝手に想像しています。


この場合はまず医療機関に問い合わせます。


確認書をそもそも発行したのか、適切な手順で説明等が行われたのか。


問い合わせた結果その過程に問題さえなければ、医療機関から確認書(医療機関保管用のみ、もしくは渡しそびれであれば確認書全体)をFAXしてもらえばそれでOKのようです。


わざわざ原本を医療機関に取りに行く、確認書を再発行するなどの手間は不要です。


次回処方時に気を付けてくださいで解決させてしまって問題ありません。


ただし、確認書の発行さえ行われていない(もしくはe-learningさえ受講していない)場合は、患者さんに病院へ戻ってもらう必要があるとのことで、この状況だけはなんとしてでも避けたいところですね。


確認書と麻薬処方箋の内容を照合して調剤するまで


既出の通り処方医師名などを照合するわけですが、もし確認が必要な事項が出てきた際には医療機関に問い合わせる、もしくは塩野義製薬で問い合わせ窓口を設置されているようなので、そちらに問い合わせるのが流れとなります。

オキシコンチンTR錠問い合わせ窓口の電話番号
 

慢性疼痛に対するオキシコンチンTR錠の可能性について

中等度以上の慢性疼痛でお困りの患者さんは恐らく大勢いらっしゃるかと思います。


今までは一部のモルヒネ製剤やフェンタニルパッチ製剤のみしかなかった慢性疼痛に対する医療用麻薬ですが、今回からオキシコンチン®TR錠(※2)という選択肢が一つ増えました。


※2 オキシコンチンの後発品(ジェネリック)は現時点で慢性疼痛に対しての適応は取得していません


正直少し複雑な流通管理体制とはなりますが、その方々の痛みが少しでも和らぐきっかけになるかもしれないので、薬剤師の端くれとしてしっかりと準備を進めておきたいと思います。



話しはそれますが…小林化工が大変なことになっています…↓
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