薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」の特徴

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病院内の勉強会で「テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター」の説明を聞いてきましたので、備忘録を兼ねて私が感じたことなどを書いてみたいと思います。


以下、今回発売予定となっている新しいタイプのテリボンをテリボン(オートインジェクター)と記載し、旧型(既発売)のテリボンをテリボン(皮下注用)と記載させていただきます。


2019年12月4日:薬価についての情報を追記しました

テリボン(オートインジェクター)の基本情報

テリボン(皮下注用)自体は元々発売されています(販売開始は2011年11月)。


そのため病院内で働いている薬剤師からすると成分的にはお馴染みなのですが、調剤薬局の薬剤師からすると初見の方もいらっしゃるかと思いますのでまずは基本情報を見ていきましょう。

商品名

テリボン皮下注28.2μgオートインジェクター

成分名

テリパラチド酢酸塩

発売日

2019年12月11日

効能効果

骨折の危険性の高い骨粗鬆症

用法用量

通常、成人にはテリパラチドとして28.2μgを1日1回、週に2回皮下注射する。
なお、本剤の投与は24ヶ月までとすること。

用法・用量に関連する注意(一部抜粋)

・投与間隔は原則3~4日間隔とすること。
・本剤の投与をやむを得ず一時中断した後に再投与する場合であっても、投与の合計が24ヶ月(208回)を超えないこと。

副作用

悪心、嘔吐
頭痛
ふらつき
傾眠
倦怠感
血圧変動

など

相互作用

作用機序的にカルシウム値が上昇してしまうため、それ由来の相互作用が下記のように設定されています(薬品名は省略します)。

ジギタリス製剤
→高カルシウム血症に伴う不整脈の誘発に繋がる(ジギタリス製剤の作用が増強されるため)

活性型ビタミンD製剤
→血清カルシウム値が上昇するおそれがあるため

薬価

6018円/本

→1週間で2本使用するので、12036円/週となります。

※テリボン(皮下注用)が11102円/週であったことを考えると、デバイス代(?)が上乗せになって設定されているかと思います。しかし、患者さんのトータル(通院にかかる診察代、交通費等)を考えるとメリットは多そうです!!

→テリボン(皮下注)は毎週病院に通院する必要がありましたが、テリボン(オートインジェクター)であれば月1の通院でも対応可能です。

テリボン(オートインジェクター)の薬ザリ的第一印象

「週2回投与ってなんだ!!??」


この一言に尽きます(笑)


テリボン(皮下注)は週1回投与の注射薬ですが、自己注不可となっています。


そのため、毎週患者さんが注射をするためだけに来院する必要がありました(もちろん数回に1回はちゃんと診察込みでしょうが…)。


ただでさえ骨折リスクが高い方が対象となっているのに、そういった方に毎週来院してもらうというのもなんとなく矛盾を感じていました。


そこで、今回自己注が可能なテリボン(オートインジェクター)が発売予定となり「おっ!!」と思ってはいたのですが、まさかの週2回投与。しかも、投与間隔は3~4日とアバウト!!


どういうこと??


と思っていましたが、しっかりとメーカーさんが説明してくれました。


開発の経緯としては、やはり無駄な来院を少しでも減らせるようにというのがあるようです。さらに、テリボンというのは副作用頻度が比較的高めで、この点を改善させたいということで開発されたとのこと。


来院回数を減らすというのは、自己注にすることで解決です。今までは週に1回の来院を必要としていましたが、患者さんの状態さえ許せば受診間隔を1週間以上にあけることも可能となりました。患者さんによっては1か月に1回の受診でも問題ないような方も多々いるかと思いますので、この点は大変利点となるかと思います。


次の副作用についてですが、こちらも臨床試験では良好な成績を出しているようです。


テリボン(皮下注)の副作用は、一時的に血中濃度が高くなることで出現しやすいと言われていました。


テリボン(皮下注)の使用方法は週に1回56.5μg投与となっています。


それに対してテリボン(オートインジェクター)は1回28.2μgが週に2回投与されます。週に換算すると28.2x2=56.4ということで、テリボン(皮下注)と同一用量(0.1μgずれていますが、、どういうことでしょう??今度MRさんに確認してみます)となります。


週あたりに投与される量は変わりませんが、2回に分割投与することで血中濃度のピーク値を下げることが出来ます。そうすることで、臨床効果に関してテリボン(オートインジェクター)はテリボン(皮下注用)との非劣勢が証明され、副作用も軽減できる製剤となったようです。


この2点に関しては患者さんにとっては良いこと尽くしのように感じます。


しかし!しかしですよ??


指導する側からすると少し悩ましい点もあります。

それは、


原則投与間隔は3~4日間隔とすること


という一文です。


この原則を守るとなると「月・木曜日に投与」「火・金曜日に投与」などとなると思います。そうなると、中2日と中3日の間隔が出来て添付文書通りとなります。


まー、このように指導すれば解決ではあるのですが、勉強会の終盤にこのようなことをお話しされていました。


「テリボン(オートインジェクター)を連日投与しても、月・木で投与しても、月・金で投与しても血症中濃度に変化はありませんでした」


と。


つまり、効果だけを考えたら週に2本打てさえすれば本当になんでも良いんだな、というのが率直な感想です。


ただし、その場で1日に2本打った場合という例はなかったので、臨床試験が行われていないのか、それとも不都合なデータで出されなかったのかは不明ですが、おそらくテリボン(皮下注用)と同様の推移を示すだけかと予想されるので大きな問題はないと考えられます(一時血中濃度が高くなるため、副作用の発現頻度は上がるかもしれません…)。


以上のことから、患者さんのコンプライアンスを重視するとなると、3~4日間隔はあまり重要視しなくて良いのかなと思っています。


それに、あくまで「原則」ですしね。


あと、この製剤は冷所保存の薬となります。


すると必ず疑問に思うところですが、


「誤って冷所に保存できなかった(室温で保存してしまった)時の許容範囲は??」


今回の勉強会でも同様の質問がMRさんへありました。


その答えは、、


「3日間室温で保存してしまった後に、再度冷所保存に戻せば大丈夫だったとの試験結果があります」


とのことです。


長文お読みいただきありがとうございました。


他にもこんな薬剤について書いていますので、よろしければどうぞ↓↓
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