5月7日の午前中、一本の電話が私が勤務する薬剤部にかかってきました。
電話の内容は
「プラルエントが特許の関係で法的に供給を継続することができなくなりました」
という内容だったようで、それを聞いた薬剤師は大慌て!
寝耳に水とは正にこのこと。。
販売停止に至った経緯などを調べてみました。
※2020年5月8日追記:アムジェン社とサノフィ社による裁判について
プラルエントが販売中止に至った理由
時は遡って2019年。
知財高等裁判所で
「プラルエントがアムジェン社が保有する特許を侵害している」
との判決が出されます。
これに対してプラルエントを販売しているサノフィ社は判決を不服として最高裁判所に上告を申し立てるも、2020年4月24日に最高裁よりこの上告を棄却する決定がなされました。
この棄却をもって、サノフィ社はプラルエントを法的に供給を継続することが出来なくなり、今回の販売停止に至りました。
アムジェン社とサノフィ社による裁判について
原告であるアムジェン社は
「プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に対する抗原結合タンパク質」
という名前の発明に関して2つの特許を取得していました(第5705288号、第5906333号)。
そんな中、サノフィ社はこのPCSK9に結合し、LDL受容体へのPCSK9の結合を阻害することにより血中LDLコレステロールを低下させる完全ヒト型モノクローナル抗体であるアリロクマブを有効成分とする抗PCSK9抗体医薬品プラルエントの輸入・販売等を行っていた。
特許を取得していたアムジェン社は抗PCSK9抗体医薬品としてレパーサ(エボロクマブ)を販売しており、プラルエントの差止め及び廃棄を求めて東京地裁に出訴していました。
そしてようやくこの裁判の判決が出て、今回のプラルエント販売中止に至りました。
すでに納品済みのプラルエントは使用できるの?
今回の一報を聞いてまず脳裏をよぎったのは、
「院内にすでに在庫しているプラルエントは使用できるのか?」
ということでした。
この件については下記に写真を載せますが、メーカーからの配布資料にこのように記載されています。
「すでに医療機関および特約店に販売済みの製品につきましては差し止めの対象ではございませんのでご使用いただけます。」
とのこと。
ひとまず一安心。
すでにプラルエントを使用している患者さんはどうする??
ここが一番の問題ですね。
私の病院でも使用されている患者さんはいらっしゃいます。
その方たちの治療方針の変更を余儀なくされてしまったわけです。
幸い院内で在庫しているプラルエントは法的にも使用可能とのことなので、今すぐに代替治療or代替薬を決定しなければならないわけではありませんが、そのことを主治医と薬剤部は頭に入れて運用していかなければなりません。
ちなみに、今回販売中止に至った理由は特許の問題であって、製品の安全性等が問題ではありません。
プラルエントを使用していたから何か害を受けるとか不利益を被るわけではありませんので、その点はご安心ください。
「プラルエント」販売停止についてのまとめ
そもそもプラルエントが裁判に巻き込まれていたことさえ初めて知りました…。
この領域の情報に疎いということが身に染みて分かりました。
おそらくですが、プラルエントを使用していた患者さんの多くはレパーサへの変更に流れることでしょう。
今一度レパーサをはじめ、コレステロール系統の勉強をしなくてはいけないなと…
このご時世、MRさんが病院に訪問してこの件について周知することも難しい状況なのでMRさんは大変だ…
などなど色々と思うところがありますが、追加情報がありましたら随時追記していこうと思います。