薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

ALP(JSCC)とALP(IFCC)?違いや換算をお伝えします

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※医療従事者向けの記事となっています。


先日何気なく患者さんの採血結果を見ていたら見慣れない項目がありました。


それは


ALP(JSCC)



ALP(IFCC)


の2つです。


ALPってあのALP(アルカリホスファターゼ)のことだよな?


かたやJSCCと書いてあるということは測定方法でも変わったかな?


と調べてみたら変わってました!!


日本でのALPの測定方法が変更になったようです(2020年4月1日から順次)。


医療従事者の方は要チェックです!


数字的に


今までのALP≠新しいALP


ですのでご注意を!

そもそもALPって何?

まずはALPについて簡単に復習しておきたいと思います。


Alkaline phosphatase(アルカリホスファターゼ)
→リン酸モノエステルを加水分解する酵素の中で反応の至適Phをアルカリ側にもつもの。腎臓の近医尿細管、小腸粘膜、骨、胎盤などに比較的多く存在している。


一言でいえばこんな感じかと思いますが、正直基礎関係は苦手な私なのでこれ以上掘り下げないでおきます。


ALPの測定意義としては


【高値】
クル病、悪性腫瘍、副甲状腺機能亢進症、閉塞性黄疸、肝臓がん、肝疾患、胆管癌、胆道炎など


【低値】
壊血病、甲状腺機能低下症など


とされているので、その他の所見と合わせて病態を把握するのに使用されます。

ALP(JSCC)とALP(IFCC)の違い

それでは、ALP(JSCC)とALP(IFCC)の違いを解説していきます。


今までのALPはALP(JSCC)に該当します。


「JSCC=日本臨床化学会」のことで、日本での今までの測定方法のことを示します。


それに対してALP(IFCC)は


「IFCC=国際臨床化学連合」のことを示しており、世界の基準測定方法を示します。


つまり、私の病院では今までのALPと世界基準のALPを併記しているということになります。


ALPの測定方法をJSCC→IFCCへ変更する理由

それでは、なぜ日本でJSCC法→IFCC法へ変更することになったのでしょうか。


JSCC法で使用する試薬の特徴として小腸型ALPの反応性が高いということがあげられます。


ただただ反応性が高いだけで終わればよいのですが、厄介なことに血液型がB、O型の約8割の方は病気とは無関係に小腸型ALPが出現すると言われています。


この小腸型ALPを、反応性が高い試薬を使用するJSCC法は測定してしまいます。


そのためB、O型の方では健康診断の際に無意味にALPが上昇したように見えてしまうことがありました。


採血結果を見ると高値だけど、実は病気とは無関係に出現している小腸型ALPを測定していただけ


こういったことを回避できるのではないかと考えられます。


血液型に関係なく、小腸型ALPは病的な意義を持たないのであれば測定しないに越したことはありませんので、理にかなった変更かと思います。


※胎盤型ALPは反対に反応性が低いようで、この場合もIFCC法と乖離が出てきます。

ALP(IFCC)に変更するメリット

既出のものもありますが、今回日本でIFCC法へ統一される理由を挙げてみます。


・本来識別するべきである肝臓・骨疾患の臨床的意義が向上する

・世界のデータと同一のものと扱うことができる→治験データや論文を扱う際の利点となる


このようなところだと思います。

ALP(JSCC)とALP(IFCC)の換算は?

一般的にこういった測定方法の変更があると、今まで計測された数字と新しく測定される数字の換算値が設定されます。


今回も一応換算値が公表されています。


JSCC→IFCC:0.35倍
IFCC→JSCC:2.84倍


ただし、これらの換算値はあくまで検体のALPがほぼ肝型と骨型のみだった場合の換算値となります。


上記でお示しした小腸型ALPや胎盤型ALPが多い症例ではこの換算値は実測値と乖離する可能性が高いと考えられます。


検査値を見ているその患者さんの血液型や妊娠の有無(有の場合妊娠週数も)を考慮してみる習慣が必要だと思います。

ALP(IFCC)の基準値

成人男女の基準値が公表されています。


成人男女:38~113 U/L


とのことです。

ALP(JSCC)とALP(IFCC)のまとめ

薬剤師目線で考えると院外処方箋が気になります。


最近は院外処方箋に検査値を印字する病院が増えてきています。


その検査値欄には何気なく「ALP」と記載されていました。


しかし各病院の測定方法変更に合わせてJSCC法で測定した値なのか、それともIFCC法で測定したものなのかをしっかと記載する必要があります。


皆さんも一度ご自分の施設の状況を確認してみることをおすすめします。


健康診断の結果を送付するさいにもこの件のこと書いてあるのかな?


自施設でも確認してみたいと思います。


このような本で日々勉強しております。


何かのご参考まで。


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