薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

某タレントさんの「アビガン大量投与」に一言物申す

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どうも、細々と病院薬剤師をやっている薬ザリです。


院内では感染症をメインに仕事をしていることもあり、日頃から新型コロナ関連のニュースなどは見るようにしています。


そんな中、某タレントさんがこんなコメントを残されたとか、、


「一刻の猶予もないのでアビガンでいかないかというお話をいただき、1回2回は大量投与でした」


と。


大量投与??


ちょっと気になったのでこの大量投与について私見を存分に含みますがまとめてみます。

アビガンを大量投与するに至った経緯

某タレントさんが体調不良を訴えて病院に行ったところ肺炎の傾向が見られて入院(そこに至るまでの経緯の中で批判されている点もあるようですが、ここでは特に触れません)。


その2日後にPCR検査陽性が判明し、新型コロナ感染症と診断がついた様子。


診断がついた時には一刻の猶予もない状態で、即座にアビガンの投与を担当医に勧められ処方に至ったものと思われます。


そして、この処方されたアビガン内服の1回目2回目が「大量投与」だったようです。

そもそもアビガンは本当に大量投与だったのか?

さて、1回目2回目の内服が大量投与で、それ以降は大量投与ではなかったと読ま取れます。


今回のポイントは


1回目2回目の内服が大量投与


というところです。


薬剤師か感染関連の医師の方はもうお気付きかと思いますが、おそらくこの大量投与は通常投与量に近い量であると推測されます。


アビガンの通常投与量


アビガンに限らずどんな薬剤でも通常投与量が添付文書上で規定されています。


そこでアビガンの添付文書を見てみると下記の投与量が規定されています。


「通常、成人にはファビピラビルとして1日目は1回1600mgを1日2回2日目から5日目は1回600mgを1日2回経口投与する」


mg数での表記なのでいまいちピンと来ないかもしれませんが、アビガンは1錠あたり200mgの製剤なので、1日目(1回目と2回目)は8錠ずつ、それ以降は3錠ずつということになります。


なのですが、上記の投与量は新型インフルエンザに使用する場合の投与量になります。


過去に別の疾患拡大を念頭に治験を実施していたことがあり、その時は1日目は1回1800mg1日2回2日目以降は800㎎を1日2回でデータが集積されており、安全性は確認されています。


そのため今回の新型コロナに対してもこの1800㎎×2、800㎎×2でのデータ蓄積が進んでいるようです。


そう考えると、どの疾患であろうと確かに1日目(1回目と2回目)は多く感じますよね?
1800㎎を1日2回となると、9錠の薬を1日2回も内服しなければならないことになります。


新型インフルエンザに使用するよりも多めに投与することになるから「大量投与」という言葉を医療スタッフが使用して某タレントさんが引用されたのか、それとも単純に内服する錠数が多かったから「大量投与」という言葉を使用したのかは分かりません。


注意

エボラ出血熱や新型コロナに対する投与量というのは正式には認められておりません(添付文書に記載されているわけではない)のでご注意ください。

そもそも大量投与って何?

そもそも大量投与って何でしょうね??


なんとなく大量投与という言葉は良いイメージには繋がりにくいと思います。


世の中には1錠あたり1mgに満たない成分しか入っていない薬もあれば、1錠あたり10mg入っている薬もあります。


1mgの薬を10錠飲めば10mgですが、当然10mgの薬を1錠飲んでも10mgになります。


1mgの薬を10錠飲む方が大量投与の雰囲気があるかもしれませんが、中身は一緒です。


今回のアビガンも1錠200mgの製剤を1度に8錠(もしくは9錠)内服し、翌日以降からは1回3錠(もしくは4錠)に減ったため「大量投与」という言葉を使用されたのかと思いますが、正直内服する薬の錠数は関係ありません。


あくまで薬の成分量(○○mg等)が大事です。


そして、薬は量を多くした分だけ効くといういうわけではありません(一部の薬を除く)。


飲みすぎることで副作用が出現しやすくなることが多々ありますのでご注意ください。


もし万が一この記事を読んでくれている皆さんが今後アビガンを内服することになってしまった際には(もちろん感染しないのが一番ですが…)、最初は1回9錠と言われ驚くかもしれませんが、もともと1錠あたりの含有mg数が少ないがために錠数が多くなってしまっているだけなのであまり心配する必要はないと思います。


それでも心配だという方は病院のスタッフに確認してみましょう。


そして最後に、某タレントさんが早く回復してくれることを祈って「物申す」を終わりにします。

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