薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

抗菌薬適正使用支援加算(2020年)について

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新型コロナ(COVID-19)の影響で感染領域を主として働いている薬剤師の方々はバタバタしているかと思いますが、目の前に診療報酬改定が迫ってきています。

今回の改定において「抗菌薬適正使用支援加算」に関して変更点があったので、私個人の意見(現在AST(抗菌薬適正使用支援チーム)の専任の薬剤師として勤務しています)も含めながら変更点を紹介したいと思います。

抗菌薬適正使用支援加算の変更点①:施設要件

まずは算定できる施設に変更がありました。

今までは感染防止対策加算1に加え「感染防止対策地域連携加算」を算定している病院にて一定の基準を満たせば抗菌薬適正使用支援加算を算定することができましたが、2020年改訂にて「感染防止対策加算1」を算定している施設とされています。

事実上、感染防止対策加算1を算定している施設は感染防止対策地域連携加算も算定しているのが大多数と言われているのであまり影響は受けないのかな?

感染防止対策加算算定施設数
 

受けるとしたら感染防止対策加算1を算定していたけど感染防止対策地域連携加算を算定できていなかったごく少数の病院かと思います。

抗菌薬適正使用支援加算の変更点②:ASTの業務内容

ASTとしての業務内容が提示されておりますが、その中でも個人的に際立っていると感じる箇所について紹介していきます。

モニタリング実施患者について

改定前

広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者、菌血症等の特定の感染症兆候のある患者、免疫不全状態等の特定の患者集団など感染症早期からのモニタリングを実施する患者を施設の状況に応じて設定する。

改定後

抗MRSA薬及び抗緑膿菌作用のある抗菌薬を含めた広域抗菌薬等の特定の抗菌薬を使用する患者、菌血症等の特定の感染症兆候のある患者、免疫不全状態等の特定の患者集団など感染症早期からのモニタリングを実施する患者を施設の状況に応じて設定する。

今までは広域抗菌薬という言葉だけでしたが、今回の改定にて抗MRSA薬及び抗緑膿菌作用のある抗菌薬と具体的な薬剤が提示されました。あくまで施設の状況に応じて設定するという言葉が残っているので必須ではないと考えられますが、少なくてもこのような薬剤については今後ASTとして観察していく必要があると考えられます。

ちなみに私の病院の現状

この改定が入っても全く問題ない病院もあるかと思いますが、私の病院では大問題です。

私の病院の現状としては体温が38度以上血液培養陽性カルバペネム長期使用症例抗MRSA薬使用症例に関してASTとして拾い上げ、抗MRSA薬症例は週1回のカンファ必須、その他の症例(発熱、血培、カルバペネム)に関しては専任の私がカンファに出すか出さないかを振るいにかけています(もちろんカンファに出さないとしても症例への介入は行います)。

これに抗緑膿菌作用のある薬剤(TAZ/PIPC、ニューキノロン各種、ザバクサ等)を追加するとなると…想像しただけで頭痛が。。

www.yakuzari.work

当院での症例数は圧倒的にTAZ/PIPC>>>>カルバペネムのため、拾い上げる症例数がおそらく何倍にもなります。

この仕事量はおそらくヤバイ!!!

とうとう外来の抗菌薬も…

今後避けては通れないと考えてはいましたが、やはり算定条件になってしまいました。

外来の抗菌薬についてです。

新設

当該保険医療機関の外来における過去1年間の急性気道感染症及び急性下痢症の患者数並びに当該患者に対する経口抗菌薬の処方状況を把握する

なかなかハードルが高いですね。

あくまで状況を把握するだけなので今回は良いかもしれませんが、次回の改定時には処方状況を把握したうえでさらなる介入を求められることになるでしょう。

レセプトデータから拾うにせよ、病院毎に違うかと思いますが感染システムを導入されている病院であればそちらを使用して抽出するにせよ、介入を踏まえたうえで準備を進めた方が良いと思います。

早めに院内の関係各所に確認をとっておこうと考えています。

抗菌薬適正使用支援加算(2020年)の疑義解釈について

3月31日付で疑義解釈が公表されました。

疑義解釈資料の送付について(その1)

上記のPDFファイルを見てもらうと分かるのですが、抗菌薬適正使用支援加算に関する部分を下記に抜粋します。

抗菌薬適正使用支援チームの業務として「外来における過去1年間の急性気道感染症及び急性下痢症の患者数並びに当該患者に対する経口抗菌薬の処方状況を把握する」とあるが、令和2年7月の報告は、令和2年4月以降に把握した3月間の実績でよいか。

(答)令和2年7月の報告に限り、令和2年4月以降の3月間の実績を報告することで差し支えない。

今回の診療報酬で追加があった外来の状況把握についてです。

毎年7月に過去1年分の状況を報告しなければなりませんが、今年(2020年)に関しては4月~6月末の約3か月間の報告で差し支えないということですね。

レセプトから情報を収集するのであれば過去日のものも拾えるかと思いますが、もし他のシステムで拾おうと考えていた病院があれば朗報?なのかもしれません。

抗菌薬適正使用支援加算変更に伴っての対応

仕事量が莫大に増えることは目に見えているので、早めに対応しておかないと4月以降院内で大混乱(と言っても実際混乱するのは私だけかと思いますが…)してしまうので、私は大きな手を打とうと思います。

それは、抗菌薬適正使用支援チームの専従として配置してもらう!

です。

大学病院レベルであれば既に薬剤師が専従で活躍しているかと思いますが、一般の中小病院では人員の関係などで薬剤師を専従に出せないところがほとんどかと思います。しかし、抗菌薬適正使用支援加算を算定していく以上さすがに専従が必要ではないかと考え、最近上司と相談し病院に働きかける方向となりました。

というか、各病院で薬剤師を専従に置くことが前提にならざるを得ないように抗MRSA薬及び抗緑膿菌作用のある抗菌薬を含めたという文言を入れたのかな?とも思います。

果たして当院での薬剤師専従化計画は成功するか否か…。

抗菌薬適正使用支援加算業務を行う上での参考資料

もし専従するとなると、今までの知識だけでは太刀打ちできない症例に出会うことも多々あるかと思います。

常日頃知識に関してはアップデートしていかなければなりませんよね。

最後に私自身が参考にしている書物を何点か紹介します。

白衣のポケットに入るぐらいのサイズなのに、臨床で困った際にはすごく頼れる1冊です↓

日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師の試験に関する参考図書です。
勉強のためだけかと思いきや、普段の業務でも大活躍してくれている1冊です↓

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www.yakuzari.work
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