アンサングシンデレラもついに4巻まで来ましたね!
待望の発売日当日!!
ここに来て初めて発売日(2020年4月20日)にゲットすることが出来たので、早速読みながら病院薬剤師としての感想を述べてみたいと思います。
1巻から3巻までの感想はコチラからどうぞ!!
※読みながら述べますので、順次記事は追記していきますので悪しからず
アンサングシンデレラ第16話
生理痛もしくは月経困難症。
当然これらは女性特有のものであり、私を含めて男性陣がその苦しさを理解することは難しいだろうと推察されます。
本編でも主人公である葵と瀬野さんが食堂(?)で生理に関しての意見を交わしている場面がありますが、本当にこの通りだなぁと思います。
さて、この回に出てくる患者さん(遠野倫さん)は激しい生理痛に対して市販薬で対応していたが、調剤薬局薬剤師である小野塚さんの助言により産婦人科を受診します。
診察の結果「低用量ピル」を勧められて飲み始めるのですが、思ったような効果が出ず、病院で薬剤交付を待っている間に激しい生理痛に襲われてしまいます。
低用量ピルを飲んでいるはずなのに??
もしかして薬をしっかりと飲めていない??
などが脳裏に浮かびますが、葵がサプリメントに何かひっかかりを覚えたようで遠野倫さんに普段摂取しているサプリメントを聞いてみると…
なんとセントジョーンズワート含有サプリメントであることが発覚!!
詳しい話は避けますが、低用量ピルとセントジョーンズワートを一緒に摂取すると低用量ピルの効果が落ちてしまうことがあります。
少し専門用語を使うと、
セントジョーンズワートによるCYPの誘導により低用量ピルの代謝が促進され、低用量ピルの効果が減弱した相互作用の一例
と言い表すことが出来ます。
今回はこの葵の気付きによってサプリメントの摂取を中止し、遠藤倫さんはそれ以降生理痛が楽になったようです。
めでたしめでたし、、
なのですが、今回の話を読んでみて是非一般の方にも気にしてほしいことがあるのでもう少し書いてみます。
アンサングシンデレラ第16話を読んで皆さんに伝えたいこと
何か薬を飲んでいる、もしくはこれから薬を飲むことになった場合には必ず薬剤師(病院薬剤師でも調剤薬局薬剤師でもドラッグストア薬剤師でも誰でも可)に相談してください!!
これは声を大にして皆さんに伝えたいです。
本編にて、遠藤倫さんは初診のため問診票を書かされていますが、摂取しているサプリメントの記入欄に適当に「ビタミン剤・コラーゲン」とだけ書いてしまっています。
ここでもし、しっかりとセントジョーンズワート含有サプリメントの商品名が書いてあれば今回の相互作用は回避できた可能性大です。
ちなみに、一般の方ですと
「セントジョーンズワートなんて聞いたことない」
という方が大多数かと思いますが、少なくても薬剤師であれば嫌というほど大学の講義で聞かされており、これについて知らない人は薬剤師の潜りではないか?と疑いたくなるぐらいの常識問題です。
そしてセントジョーンズワートに限らず、様々なサプリメントと相性が悪い医薬品と言うのは多々あります。
それらを一般の方に覚えてくれというのは苦ですので、
薬とサプリメントでも相性があり、一緒に摂取する前に必ず薬剤師に相談が必要!
ということだけ頭の片隅に入れてもらえたら幸いです。
アンサングシンデレラ第17話
第17話~第19話の物語は全て続いているのですが、今回は便宜上回ごとに区切ってまとめたいと思います。
第17話のメインテーマはオーバードーズ。
聞きなれない方も多々いらっしゃるかもしれません。
本編でもしっかりと注訳が入っています。
「オーバードーズ=薬剤の過剰摂取」と。
薬剤の過剰摂取と言うと「誤って摂取してしまった場合」、「故意的に摂取してしまった場合」などが考えられますが、今回は故意的に摂取してしまった場合に相当します
(正確に言うと故意的ではないのかもしれませんが「眠くならないなーって、ついぱくぱく飲んじゃって…」と患者さん本人が話している描写があるので、故意的で良いかな?)。
今回出てくる薬剤は、デパス、レンドルミン、パキシル、メイラックス、ジェイゾロフト、ハルシオン、サイレースなど錚々たる名前が上げられています。
どの薬を何錠ぐらい内服したのかは不明ですが、この薬品名からするとかなり危険な状態ではなかったのかと推測されます。
なのですが、、
オーバードーズを軽く扱いすぎじゃない?
素直な感想がこれです。
ICUから一般病棟への転棟の申し送りの内容↓
「オーバードーズなので(入院は)2.3日でしょ?」
本編だけではICUでどれだけ大変なことがあって、何日間入院されているのかは読み解けません。
しかし一般の方が読んだら「オーバードーズってそんな程度なんだ」とか、「少し多く薬を飲んでしまっても大丈夫なんだ」と勘違いされないかがすごく心配です。
みなさん、オーバードーズは最悪なケースになることもあることなので絶対に軽視しないで下さい!
たかだか1錠多めに飲んだだけでも一大事になることもあり得ます!
ちなみに、、
本編でオーバードーズ=ODと略されていますが、ODと聞いてOD錠(口腔内崩壊錠=Orally Disintegrating Tablets)を想像したあなたはおそらく薬剤師(笑)
さて、本編に戻りますが…
この回のもうひとつのテーマは入院中(病院の中)と退院後(病院の外)について。
病院薬剤師の患者さんに対する一つの目標は、
円滑に治療を進めることでその病気が軽快して退院してもらうこと
となりがちですが、患者さんからすると入院というのはあくまで治療の一部であって、生活は入院前と同様に続いていきます。
極論を言ってしまうと入院中は良くても退院後また悪化したら意味がないので、退院後のこともしっかりと見据えてあげる必要があります。
そのことに再度気付かされた回となりました。
アンサングシンデレラ第18話
私たちは医療従事者であり そしてあくまで病院の職員だ その働きは診療報酬という「点数」で評価され コストに見合わない働き方は見直しを要求される けれど 「点数がつかない働き」は現場に無数に存在していて 誰かの助けになっていることは きっと気づかれないままなのだろう
引用元:アンサングシンデレラ4巻 P76-77
第18話では冒頭にこの文章が出てきます。
自分の心の内を代弁してくれたのか?
と錯覚してしまうほど個人的には同意する文章でした。
医療従事者=患者の病気を治す・サポートする
というのが職務ですが、病院もあくまで経営を考えないと続かない。
そのため病院などの管理者は「点数」で評価される仕事をメインに行っていくように考えるけど、「点数」として評価される内容だけど仕事として取り扱っていくと現場が成り立たないのは百も承知。
そのため、現場では点数が付かない仕事(これが意外と患者さんのためになったりする)も多くこなしているのが現状です。
この回の後半、葵がナカノドラッグの小野塚さんに「かかりつけ薬剤師」についての意見を聞いたところ、
「地獄のような制度ですよね」
と返答します。
24時間365日オンコール体制…
私も葵同様、かかりつけ薬剤師制度に関して詳しくないのですが、おそらく仕事量に対しての対価は得られないと想像できます。
と言ってもあくまで想像の話しであり、本当の意味で理解するためにはやはり病院薬剤師と調剤薬局薬剤師の交流は不可欠かと思います。
本編でも葵が小野塚さんから薬剤師の飲み会に誘われていますね。
こういった感じで交流があることは本当にうらやましいです。
ちなみに、現実の私の病院では皆無です(笑)
…同級生などは別ですが、完全に仕事上で知り合った調剤薬局薬剤師の人と飲みに行くなどはないですね。。
アンサングシンデレラ第19話
この回のキーフレーズは
「役割」
でしょうか。
ODを繰り返している患者さんは、仕事もやめて、プライベートでも役割がないと感じていて、入院していると「患者」という役割を担っていると考えている。
葵の後輩であるくるみも、病院内での薬剤師としての役割を自問自答している描写が描かれています。
第17話で葵が小野塚に誘われた飲み会にくるみも同席し、かかりつけ制度や近隣の病院の評判などの情報収集を行っています。
その中で
「ひとりの薬剤師とのかかわりが(患者さんの)その後にも影響するってのはあると思う」
と小野塚が発言し、何かに気付いたくるみ。
自ら患者さんのためになることを考えて行動し、若月さんに「ありがとう」と言われるまでになりました。
以上の事から、くるみは自分の役割を自分で見出し、しっかりと仕事をこなしたと私は思いました。
しかし、現実ではなかなかこれは難しいんです。
実際、私自身も
「自分の役割って何だろう?」
と自問自答したことがあります。
この答えにたどり着くまで何年かかったことか…と言うか、現時点でもたどり着いたのかは不明です。
患者さんとのやり取りの中で自分の役割を考えていく。
つまり、100人の患者さんと接した場合100パターンの役割があるわけです。
「患者さんの病気を少しでも良くするように働く」という役割であることには変わりないのですが、その「少しでも良くする」方法がまさに千差万別…。
目の前の患者さんに最適な「役割」を常に考えながら仕事をこなしていく。。
その仕事の中にはもちろん「点数」にならないことも多数あります(本編でくるみが作成した薬局マップもそうですね。作成料なんてものが発生するはずもありません)。
病院として「点数」のことも考えつつ、患者さん毎の「役割」を考えながら働いていく。。
改めて考えると大変な仕事ですね…
この点を掘り下げると頭が痛くなるので次に進みます(笑)
アンサングシンデレラ第20話
例の飲み会の流れで在宅に特化した「笹の葉薬局」の見学に来た葵、くるみ、小野塚。
同じく飲み会に参加していた仁科さんから在宅について色々と話を聞きます。
正直私自身も未知の世界であり、初見の時には色々と考えさせられることがありました。
葵、くるみ共に薬剤師としての選択肢が広がったと言っていますが、正にその通りですね。
少なくても私自身は病院薬剤師のことしか知らず(学生時代に1度だけ調剤薬局の見学に行ったのですが、全く覚えていない(笑))、調剤薬局やドラッグストアーに関する知識は本当に薄っぺらいです。
第17話から19話にかけて、しきりに葵が「かかりつけ薬局(薬剤師)との連携」と発言していますが、連携するにしても連携先の事情などを把握していないと、うまく連携できることは絶対にないと思います。
相手のことも知り、自分たちのことも知ってもらう。
私自身、この事については現実でもしっかりと進めていかなければならない事だなと、今回の話を読んで気付かせてもらいました。
どこまで実現できるかは分かりませんが、いろいろと模索してみたいと思います。
3巻までのレビューはコチラ↓↓