薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

ロケルマ懸濁用散分包の特徴について学ぶ

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※当記事は医療従事者向けの内容となっていますのでご了承下さい

腎不全の治療や透析を行っている病院であれば話題に上がっていることが予想される高カリウム血症治療薬「ロケルマ懸濁用散分包」ですが、とうとう2020年5月20日に発売となりました。

MRさんの訪問も規制されておりなかなか最新の情報を入手するのが難しい環境ですが、ロケルマについて現時点で分かっていることをまとめていきたいと思います。

ロケルマの基本情報

主に添付文書、IFより基本情報を抜粋していきたいと思います。

成分名

ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物

製品名(ロケルマ)の由来

「下げる(lower)」と「カリウム血症(kalemia)」から「LOKELMA」と命名

薬価

5g製剤→1095.20円
10g製剤→1601円

効能効果

高カリウム血症

用法用量

通常、開始用量として1回10gを水で懸濁して1日3回、2日間経口投与する。なお、血清K値や患者の状態に応じて最長3日間まで経口投与できる。以後は、1回5gを水で懸濁して1日1回経口投与する。最高用量は1日1回15gまでとする

【血液透析の場合】
1回5gを水で懸濁して非透析日に1日1回経口投与する。なお、最大透析間隔後の透析前の血清K値に応じて適宜増減するが、最高用量は1日1回15gまでとする。

禁忌

特になし

相互作用

抗HIV薬(アタザナビル、ネルフィナビル、リルピビリンなど)
アゾール系抗真菌薬(イトラコナゾール、フルコナゾール、ボリコナゾールなど)
チロシンキナーゼ阻害剤(エルロチニブ、ダサチニブ、ニロチニブなど)
→これらの薬剤の作用を減弱させる可能性あり。

ただしどうしてもこれらの薬剤投与が必要な時は、ロケルマ投与前後2時間あけて投与する

副作用

低カリウム血症、うっ血性心不全、浮腫、便秘など

ロケルマ懸濁用散分包の第一印象

気になったのは次の2点。

薬価が高い

正直な話し、少し高いかなという印象が強かったです。

開始用量は10gを1日3回→1601x3=4803円/日→これを2日間。

維持量は5gを1日1回→1059.2円/日
(15g/日がMaxなので、1059.2x3=3177.6円になることもあり)

開始用量は目をつぶって、維持量だけを見ても少しお高めですね。。

参考程度に、類薬であるカリメート、アーガメイト、ケイキサレートの通常用量での薬価を記載しておきます。

カリメート経口液

77.8 x 3=233.4円(1日3包の場合)
77.8 x 6=466.8円(1日6包の場合)

アーガメイトゼリー

75.1 x 3=225.3円(1日3個の場合)
75.1 x 6=450.6円(1日6個の場合)

ケイキサレートDS

14.1 x 39.24=553.284円(1日30g(12包)の場合)
14.1 x 19.62=276.642円(1日15g(6包)の場合)

高カリウム血症治療薬は患者さん毎に量を調節するので一概に薬価の比較をすることはできませんが、他剤に比べると安く見積もっても倍以上の薬価になると思って差し支えなさそうです。

内服開始時の初回負荷って何??

抗菌薬等の投与の際には早めに薬剤の濃度を定常状態に持っていくためにローディングを行うという概念がありますが(例えばVCM(バンコマイシン)やTEIC(テイコプラニン)など)、高カリウム血症治療薬での初回負荷は聞いたことありません。

しかも開始用量が設定されているのは非透析患者のみというところも注意ですね。

正直ややこしい…

ですが、この開始用量の設定には(当たり前ですが…)ちゃんと根拠があるようです。

根拠となったのはJ-DFS試験という試験です。

・10g1日3回群の患者の83.3%が内服開始24時間後に目標値に達成し、48時間後には91.7%の患者がそれを達成していた。

・5g1日3回群とプラセボ群の24時間後の目標達成率は35.3%及び27.3%であった。

※HARMONIZE Global試験でも同等であった

たしかにこれらのデータを見る限り、初日に低用量で開始してもカリウムの下がりが悪いことが伺えます。

高カリウム血症は時に致命的になることもあるので、そのリスクを回避するためには必要な開始用量と言えそうです。

非透析患者に対して、透析患者に関してはDIALIZE試験で用量設定されています

・非透析日の本剤5g 1日1回投与を開始用量とし、透析前の血清カリウム値を4~5 mmol/Lに維持するために15g1日1回まで増量可とした

・本剤群ではプラセボ群と比較して奏効例の割合が統計学的に有意に高かった(41.2% vs 1.0%; p<0.001)

透析患者では透析することでKが除去されるので、内服開始直後に下がらなくて良いという考えかと思われます。

本当に緊急時には透析を回す、GI療法を施行する方が確実ですものね。

ロケルマに関して今後調べようと思うこと

薬剤の基本情報を抑えておくのはもちろんですが、私的には下記の点を今後調べようと思います。

胃内pHの変動について

ロケルマが胃内の水素イオンを吸着して一時的に胃内pHを上昇させる可能性があるとのこと。

この胃内pHが上昇するために相互作用の欄に何種類かの薬剤が上げられていますが、他にも注意すべき薬があるかもしれません。

副作用に関して

添付文書等を見る限り便秘の発生頻度は低いように見受けられます。

「非ポリマー無機陽イオン交換化合物」ということで既存の高カリウム血症とは違うとは思いますが、特に透析患者さんだと便秘からの汎発性腹膜炎へ繋がり、こちらも致命的になる可能性があります。

自分の感触を確かめるまでは、一応患者さんの排便状況は気にしておいた方が良いと思います(透析患者さんではリン吸着薬等も内服していて、普段から排便コントロールには気を付けてるつもりですがより一層という思いを込めて)。

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