薬剤師とザリガニの奮闘記

~薬ザリ(yakuzari)の備忘録~

抗菌薬騒動…今度はタゾピペ(TAZ/PIPC)とメロペネム(MEPM)の供給が??

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セファゾリン騒動が勃発してそろそろ6か月になろうかという今日この頃。

自分が勤めている病院ではセファゾリンの在庫がゼロとなりましたが、なんとか代替薬等を設定して大きな混乱なく感染症診療が行われています。

セファゾリン騒動の様子はこちら↓
www.yakuzari.work


そんな中、驚くべき情報が入ってきました。

今度はタゾピペ(以下TAZ/PIPC)とメロペネム(以下MEPM)が大変なことになりますよ!

とのこと。

どういうこと??

ここは日本ではなかったのか??

いろいろと情報が交錯している中で、現時点で私が把握している内容を書きたいと思います。

当記事は随時追記を行っています。追記した文章については追記した月日が分かるようになっていますので、参考にして下さい。

TAZ/PIPC・MEPM騒動の第一報

当院で採用しているTAZ/PIPCのメーカーさんが6/20の夕方に訪問してきてくれ、

「今度はタゾピペ(以下TAZ/PIPC)とメロペネム(以下MEPM)が大変なことになりますよ!」

と教えてくれました。

該当のメーカー名、そして何が起こったのかを聞きたかったのですがまだ情報はオープンに出来ないとのこと。

当院採用のTAZ/PIPC・MEPMメーカーに問い合わせ

6/21(情報をGetした翌日)に両製剤の当院採用メーカーに状況を直接確認しました。

TAZ/PIPC→当社以外のメーカーのことかと思います。当社への問い合わせが必発になる状況が予想されます。

MEPM→当社ではそのような情報を得ておらず、状況を把握できません。少なくても当社のMEPMは問題ありません。

TAZ/PIPCはどうやら確定ですね。何かが起こりそうです。

MEPMはよく分かりません(笑)

TAZ/PIPC、MEPMについての情報の詳細

情報が入手出来次第、製剤毎にアップしていきたいと思います。

TAZ/PIPCについて

どうやら騒動の元はファイザーのTAZ/PIPC(タゾピペ)とのことで、ファーザーのホームページで下記のPDFファイルが公表されています。

タゾピペ「ファイザー」供給に関するご連絡とお詫び

要点をまとめると…

・工場の補修工事中に事故があり、その後製造を中止
・現在はその時点でストックされていた在庫を切り崩しながら対応している
・このペースで行くと2019年秋頃以降から供給に支障をきたす可能性が高い
・供給再開時期は全くの未定。
・今後の対応としてはご新規お断り&出荷調整。

ここで問題なのが、TAZ/PIPC製品の中でファイザーのシェアがどの程度だったのかです。仮に1割であれば他社製品で賄うことは可能かと思いますが、セファゾリンの時のように6割以上のシェアを占めているようだと他メーカーにも影響は必須と考えられます。

と、思っていましたが、卸の担当者より下記情報をもらいました。

事故があった中国の工場は、ファイザーだけではなくニプロ第一三共エスファ明治の製品(原薬?)も製造していた!!

つまり、「ファイザー」だけではなく「ニプロ」「第一三共エスファ」も同様に製品が作れない状況に陥っているはずとのことです。

※「明治」は元々製造ラインが3本あったようで、その1本が今回の中国の工場だったようです。現在は残りの2本のラインが問題なく稼働しており、今回の事故を受けて製造を強化し始めていたとのこと。

大分雲行きが怪しくなってきました…1社ならず3社がボツとなると、さすがにシェアがそれなりになると考えられます。

あるメーカーさんよりシェアについて簡単に教えていただきました(信憑性はまだ未確認ですが…)!

だいたい3社でTAZ/PIPCのシェアの35~40%を担っているのではないか?とのことです!

セファゾリンの時ほどではありませんが、3~4割程度のシェアを他メーカーでカバーしきれるのかは正直期待できないような気がします。

【2019年8月6日追記】

上記の3社については供給制限で対応しており、そのうち(秋頃?)在庫が尽きる予定とのことで各病院は対応を迫られていると思います。


その対応のひとつとしてメーカー変更があるかと思いますが、供給制限をかけていなかったメーカーは「明治」のみでした。


が、その「明治」もとうとう…出荷調整がかかってしまいました!!


詳しい資料は公式ホームページに公開されておりますが、こちらにもPDFのリンクを貼っておきます。


タゾピペ配合静注用2.25「明治」、同4.5「明治」供給に関するご連絡とお願い


担当MRさんは、既存で契約している病院分の供給が滞るというわけではないということを強くお話しされていました。


残念ながらまとめ買いをする病院が存在するようで、そちらの対策が主とのこと。


一気に半年~1年分の使用量にあたる量を購入した病院も存在するようです。このようなことをする病院に関しては理解に苦しむところですが、これが日本の現状です。

【2019年9月12日追記】

「明治」の製品も出荷調整になってから暫く経過していますが、当院は特に制限の影響は受けておりません。既存に契約していた病院については過去の実績を考慮して優先的に納品してくれているようです。


しかし当院近隣の400床規模の病院では今回の騒動が起きてから「明治」に変更したようで、現在は月に4.5g製剤が3箱/月しか納品されないと嘆いていました。3箱=30バイアルなので、重症患者に1度使用したらそれで終わってしまう本数です。代替薬としてカルバペネム等を使用するしかない状況と話していました。


当院はまだ良い環境のようですが、患者さんに不利益が出ないことを第一優先に考えなければいけませんね。

MEPMについて

セファゾリン騒動の時に既に何社か出荷調整としていますが、それ以上の情報については持ち合わせておりません。

【2019年9月12日追記】

MEPMの入手も困難だという病院もあるようですが、当院に限っては全く問題ない状況が続いています。


出荷調整等もかかっていないようで、買いたいだけ買える状況です。


しかしカルバペネムは本来大量に使われるべき薬ではないので、いざというときに使用できる分だけの在庫があれば良いと考えると、在庫の抱え込みは良くありません。ほどほどな在庫量でやりくりをしています。

そもそもTAZ/PIPCとMEPMとは??

セファゾリン騒動と同様なことが起きるとすると、だいぶ大変なことが起きます。

セファゾリンは薬剤費が安いことや、抗菌スペクトルからも周術期に最も使用しやすい抗菌薬のひとつであり、どこの病院も使用数が多くなるのが一般的かと思います。ですが、コストさえ無視すればなんとか代替薬を設定することは可能です。実際に各関係団体から代替薬リストも公表されています。

しかしTAZ/PIPC、MEPMについては周術期に使用する薬剤では決してなく、一般的には重症感染症に使用される最重要薬剤のうちの一つです。抗菌スペクトルも広いこの両剤がもし手に入らない、手に入りにくい状況になるのであれば、こちらは患者に不利益が出ること必発です。

TAZ/PIPCとMEPM騒動で今出来ること

くしくもTAZ/PIPC・MEPMの代替になり得るか?というスタンスでザバクサ®という抗菌薬が6/25に発売予定となっています。
www.yakuzari.work

こちらで代替できるか?とも考えられますが、新発売であり日本国内でのエビデンスがまだまだ不足している状況で突然代替薬にあげて良いのかは判断が難しいところです。

この騒動が本当に起こるのであれば、しっかりと職能を発揮していかなければならないと気を引き締めていこうと思います。

まずは正確な情報収集が一番ですね。

Get出来た情報は逐一UPしてこうと思います。

↓↓感染症について勉強するのにおススメの本↓↓

・こんなご時世なので、改めてAMR対策アクションプランを見直してみても良いかもしれません↓
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・TAZ/PIPCに重大な副作用が追記となりました
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